悪役の善人 其ノ壱【※裏切り】

悪役が慕われる所以 其ノ参 ページ6

〜Aside〜

「………………。」

山の頂上付近には、民家らしきものが建っていた。

もう夜になっている。

……鬼狩りの時間だ。

ここから鬼の気配と死の気配が濃厚に感じられる。

「……行くわよ」

全員が頷いたのを見てから、民家の戸を開ける。


ーー中にいたのは、拘束された状態で怪我だらけの少年だった。


彼があの子のお兄さんですか……

「大丈夫…ではありませんよね。

今拘束を解きますから、じっとしててください」

「お、俺の事は気にしないでください！

あの化け物は俺を囮にして、助けに来た奴を食うつもりです！」

気にするなという言葉を無視し、少年の拘束を解く。

「…知ってますよ。何となくそんな気がしてましたから」

隊士達が抜刀した音が聞こえた。

…流石にこの殺気には気付いたらしい。

「こういう場合は、殺気を隠して近付くのが賢いやり方ですよ」

少年は震えながら私の後ろを見た。

「隠れて」

小声で少年に声を掛け、私は後ろを向く。

そこにいたのはーー

「アンタ、ウチが阿呆や言いたいん？」

笑いながらも少し腹が立っているらしい鬼。

………あら？

「アンタ、元下弦の参ね。

…数字を剥奪されるなんて、何したのかしら？」

「…初対面で随分と言うてくれるやないの」

その場にいる全員、鬼が怒ったのが分かった。

「少しお話でもしよか思うたけど、する気も無いみたいやし……

…散々痛めつけてから殺したげるわ」

「っ！？」

「おい！大丈夫か！？」

一人の隊士が攻撃を受けた。

……不意打ちにやられましたか…

……？

攻撃されたあの人、様子が…？

「どうや？ウチの血鬼術。

ウチの血鬼術はな、傷口から毒を侵入させる術なんよ。

他にも毒の血鬼術使う鬼はようけおるけど、ウチのは格別よ？

ウチのは回るん速いからなぁ」

鬼はケラケラと笑う。

「……毒、大丈夫？」

「っ…に見えるかよ…」

「そう。解毒薬を調合する暇がないからアンタは後よ」

「お前っ、仲間を見捨てんのかよ！？」

一人が声を荒らげる。

「五月蝿いわね、誰も見捨てるなんて言ってないわよ」

「は……？」

「毒が回りきる前にコイツを倒せば良いのよ。

協力してくれるかしら？」

私がそう言うと、渋々、という顔で了承した。

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ようけ=たくさん

傷口から毒を……
どう言うのが正解なんだろ

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