悪役の善人 其ノ壱【※裏切り】

鬼の少女 ページ40

〜Aside〜

「っ！！？」

…全員の気配が竈門さんに向かったかと思ったが、一体の鬼の気配が方向を変えて、私の方に急激に近付いた。

この気配は、怖がりのような鬼のものですね……

あの鬼は怖がりのふりをしているだけのような気もしますが。

「十六ではないが美味そうな女だ…」

怖がりなら鬼狩りを喰おうなんて思わないはずですから。

「アンタたち気持ち悪いのよ！」

地面から出てきた鬼の攻撃を横に跳んで回避しながら、壁を蹴って鬼に斬り掛かる。

鬼は即座に沼に姿を消し、私が蹴った壁の反対側の壁に移動した。

勢いが消せない私は、そのまま鬼の待つ壁に突っ込むーー

「『白の呼吸 参ノ型 白雪(しらゆき)』！」

ーーことは無く、技を放つ。

また素早く回避される。

…鬼の首は掠ったが、完全に斬ることはできなかった。

竈門さんの方の様子を見るが、あちらも三人の鬼に連携を取られ、苦戦しているようだ。

鬼の攻撃をしゃがんで避けた竈門さんの背後にまた鬼が現れる。

あれは…間に合うでしょうか……？

竈門さんが応戦しようと呼吸を整えた時ーー


ーー竈門さんの背負っていた箱から、鬼の少女が鬼の頭を蹴った。


その蹴りで鬼の首が捻じきれんばかりに回転する。

「…なぜ人間の分際で、鬼を連れてる」

一時的に鬼たちの攻撃が止む。

少女は箱から出てきた。

…彼女が、竈門さんの妹であり鬼となった少女……

確か、禰豆子さんという名前でしたか………

蹴られた鬼は沼に沈んでいった。

禰豆子さんは和己さんと女性に近付く。

「…………！！！」

禰豆子さんは、二人の頭を優しく撫でた。

……なるほど、冨岡さんが鬼殺隊に招いたわけです。

この兄妹は、何かが違うのかもしれませんね。

私は目を閉じる。

「……にしても…やっぱりアンタは怖がりではなさそうね」

鬼の気配が近付くのを感じ取り、目を開く。

一方禰豆子さんは鬼の元へ向かうと、思いきり足を振り上げた。

そして勢いよく振り下ろす。

が、足を下ろした時には鬼は沈んでいた。

それと同時に、私の方に鬼が襲い掛かってくる。

「俺は…怖がりだよ」

「嘘つけ。『白の呼吸 壱ノ型 白刃』」

「攻撃しには行くが、わざわざ攻撃は受け止めずに全部避けるしな……」

また回避される。

………小賢しい……！！

「禰豆子！！深追いするな！！こっちへ戻れ！！」

「！」

竈門さんの言葉を聞き、消えた鬼に攻撃しようとしていた禰豆子さんは、竈門さんの元に帰ってくる。

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