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#35 ページ37

昼休み。

久しぶりにAと一緒に弁当を食べることになった。

俺がAを誘った。



「遅くなってごめん、赤葦くん。自販機混んでて、買うのにすごい並んだー」

「おつかれさま」




屋上へ続く踊り場で食べることにした。

屋上は立ち入り禁止のため、めったにこの階段付近に人がくることはない。


俺とAは階段に座って、弁当に手をつける。




「ねぇ。何か俺に隠してることない?」



あまりに唐突すぎたか。


Aが眉間にシワを寄せて首を傾げた。





「ないよ。…急にどうしたの?」


「いいから。本当のこと聞きたいんだよ」





俺の真剣な声にAは、箸を持つ手を止める。

俺とAの間に、

張り詰めたような静寂が流れた。





先に表情を緩めたのはA。


ふっ、と微笑んだ。






「…何から知りたいの?」




どうやら、木葉さんの言うとおりだったようで

Aは逃げたりしなかった。



むしろ、開き直ってるようにも見える。





「Aの両親のこと…。本当は、仕事でいないなんて嘘なんじゃないの?」


「うん、嘘だよー」



能天気に笑う。

やっぱりバレてたか、なんて。





「どうしてそんな嘘ついたわけ?」


俺がそう効くと、

Aは弁当を美味しそうに食べながら答えた。





「わかんない。考えたことないや」

「…………」



あぁ。似てる。


俺と不等号で結ばれていて

俺よりずっと純粋で真っ直ぐなAが。


俺と似ている気がした。







「お父さんはね。若くてカッコよくて、優しい人だった。私が中2のときに病気で死んだけど」



単身赴任っていうのは嘘だよー、って笑った。

俺は笑えなかった。




「お父さんが死んで悲しかった。…お母さんは毎日泣いて、私はそれが苦しかったの」


「…………」



俺は黙って聞くことしかできなかった。


時々、Aの声が震えていたけど、

俺は俯いて気がつかないフリをすることしかできない。





「でもお母さんに彼氏ができて、笑うようになってさ。私はそれが嬉しかったはずなのに…」


「A…?」





黙り込んだAは、

最低だ……、と呟いていた。





「私ね。再婚相手のその人と気が合わなかったの。結果、お母さんを傷つけちゃった」


「じゃあAのお母さんは、どこにいるの?」




Aが顔を手で覆った。

大きなため息をついて、髪をかき上げる。





「とっくに男と出てったよ」

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ナツ - Chloe**(くろえ)さん» あー、よく言われます…。名字綺麗だね、見た目もそんな感じだね、でも性格はあってないね!…って言われます。泣きそう。 次回作も楽しみにしてます、では!! (2015年4月8日 18時) (レス) id: 6fee1e567e (このIDを非表示/違反報告)
Chloe**(くろえ)(プロフ) - ナツさん» 夏樹さんですか!珍しいというより綺麗ですね!私は響きが綺麗で小説のイメージに合うような名字にしているので、本物の夏樹さんに出会えるとは笑。閲覧ありがとうございました^ ^ 次回作は 皆様と名字が被らないように気をつけます!笑 (2015年4月7日 18時) (レス) id: cd00655754 (このIDを非表示/違反報告)
ナツ - 実は私の名字、夏樹だったりします(笑) くろえさんの話を読むのは2回目だけどどちらも綺麗な話でした。 (2015年4月7日 15時) (レス) id: 6fee1e567e (このIDを非表示/違反報告)
Chloe**(くろえ)(プロフ) - さかなくん2号さん» ありがとうございます!さかなくんさんにはいつも小説に目を通して頂いて、コメントまで…。本当に感謝しかありません!次回作は夜久さんです!短編でしか書いたことがないんですけどねw頑張ります!ロリ×夜久さんですが、嫌じゃなければ見て下さい^ ^ (2015年4月5日 23時) (レス) id: cd00655754 (このIDを非表示/違反報告)
Chloe**(くろえ)(プロフ) - 藤ちゃん。さん» ドロドロ展開が苦手なのにも関わらず、最後まで目を通して頂けたなんて嬉しいです!本当にありがとうございました!泣 次回作のストックたくさん溜めます!笑 これからもよろしくお願いします。 (2015年4月5日 23時) (レス) id: cd00655754 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くろえ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/laruku/  
作成日時:2015年3月15日 19時

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