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夕食を終え、審神者の入浴時間を待ちながら、Aは離れ近くの縁側で月を見上げていた。
歪に欠けた満月が、まるで自分のようだと感傷に浸りながら。
「主さん」
ぼんやりと考え事をしていると、ふと声がかかった。
「……堀川か」
声の方へと向きながら名前を呼ぶ。
「はい」
堀川が返事をしながらAの隣に正座した。
「明日の近侍が僕に決まったので、その報告に。
朝、いつもの時間に迎えに行きますね」
堀川の報告に、Aは頷いた。
「わかった」
「それで、主さんはここで何をしていたんですか？」
「考え事だ」
「どんなことを考えていたんですか？」
「………」
Aは一度、月へと視線を戻した。
満月になるために日に日に満ちていく月。
だが今日の月は、まだ満ちきれていない。
不完全な円形だ。
「人になって、判断力が少し鈍った気がする」
「…………」
堀川は驚き、言葉が出なかった。
それを御構い無しに、Aは続けた。
「同田貫をかばうのではなく、一帯に護符を混ぜた結界を張れば、霊力や体力を余分に消耗することなく、一掃できたはずだ。
だが、私は、地を駆け、襲いくる検非違使を片端から消滅させていった。
昔の私なら、このようなことはしなかった」
「…………」
「皆のおかげで、私は『人らしく』なれた。
だが、まだ完全な人には成り切れていない。
歪な月のままだ」
そう言って、空へと手を伸ばした。
「小説で読むような人間になろうと思った。
皆もそれを望んでいた。
しかし、私がそうすると、どこかで不備が生じる。
昔の私ならより良い最適な対処ができる。
そう思えてならないのだ」
「主さん……」
月を見上げ、手を伸ばすAの顔は、過去の『人形』の顔そのもので、堀川は怖くなった。
ありのままのAでいて欲しいと言ったら。
小説を真似するのではなく、自分のしたいように行動すればいいと言ったら。
言ってしまったら、Aが人形に戻ってしまうのではないかと思い、かけるべき言葉が見つからない。
もし、Aが人形に戻るようなことがあれば、それはとても寂しく、そして、とても悲しい。
「主さんは……」
恐る恐る、堀川が問いかける。
「主さんは、『人間』にならない方が、良かったですか？」
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ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 面影草さん» ご指摘ありがとうございます！！修正しました！今後ともよろしくお願いします！ (2019年4月3日 0時) (
レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
面影草(プロフ) - 政府の役人の黒い部分が見えたり、主人公が感情を覚えてきたことでどんどん面白くなっていて引き込まれるものがあります。誤字だと思うのですが、66話の手元の紙が髪になってます。69話の我々が〜の部分が我々た〜になってますよ。これからも更新楽しみにしてます(^-^) (2019年3月29日 21時) (レス) id: 50c6120963 (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 寧々さん» ありがとうございます(^^) (2019年2月23日 17時) (レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます。続編頑張ってください。 (2019年2月23日 17時) (レス) id: 3564a3a532 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あき | 作者ホームページ：
作成日時：2019年2月23日 17時
