８１ ページ33
皆、心配している。怯えている。震えている。
失う悲しみ、辛さを知らないAも、それをひしひしと感じていた。
加州の震える手を握る。
大丈夫だと伝えるために。
どこか他人事のように『私は人間らしくなったのだな』と、Aは思った。
そして、驚いた。
自分で自分を『人間らしく』と思ったのは、それが初めてであったからだ。
「主さん、先に帰って来た3人の手入れ、終わったよ」
乱が、本丸内から出て来て報告をした。
「大包平は、目を覚ましたか？」
「まだ。鶯さんが付き添って、目が覚めたら状況を聞くことになってる」
「ありがとう」
加州と繋がれた手を見て、乱がAの反対の手を握る。
「きっと帰ってくるよね？」
「ああ、帰ってくる」
おうむ返しのように答える。
彼らには、そう答えるしかない。
乱の手も震えていた。
その時門が開き、こんのすけが駆け込んできた。
3人が帰って来たんじゃないかと期待した乱と加州は落胆して肩を落とした。
「どうだった？」
二人と手を繋いだまま、Aが聞く。
「………必死に求めたのですが…………」
俯き、明るくない声色に、少ない言葉で状況を察する。
「じゃあ、同田貫達は！！」
「……自力で帰還するのを待つしか………」
「そんな……」
加州と乱が、それぞれでイラつきや悲しみの声を出す。
「主さん……」
乱が、救いを求めてAを見上げる。
「主！浦島はまだ帰ってこないのか！？」
本丸内から、蜂須賀が声を張り上げAの元へ歩み寄る。
「……ああ」
ホログラム画面を見て、様子を確認する。
怪我の具合は、言葉にすると『中傷』にあたる状態だった。
だが、あとわずかで『重傷』と判断されることになる。
「我々が救援に向かうことはできないのか？」
「できないって……。
それで、主が向かうには、政府の認可が必要なんだけど……」
「下りたのか？」
期待の瞳でAを見るが、Aは無情にも首を振った。
「何故だ！」
今度は、政府との橋かけ役のこんのすけを問い詰める。
「なぜ、許可が下りない！？」
「それは……」
こんのすけがAを見上げる。
「A様は、強力な霊能者です。
この本丸の主を立派に勤めていらっしゃいます。
政府としても、そんな優秀な人材を失うわけにはいかないと……」
「優秀な人材……？
『便利な人形』の間違いだろう！？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 871人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 面影草さん» ご指摘ありがとうございます！！修正しました！今後ともよろしくお願いします！ (2019年4月3日 0時) (
レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
面影草(プロフ) - 政府の役人の黒い部分が見えたり、主人公が感情を覚えてきたことでどんどん面白くなっていて引き込まれるものがあります。誤字だと思うのですが、66話の手元の紙が髪になってます。69話の我々が〜の部分が我々た〜になってますよ。これからも更新楽しみにしてます(^-^) (2019年3月29日 21時) (レス) id: 50c6120963 (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 寧々さん» ありがとうございます(^^) (2019年2月23日 17時) (レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます。続編頑張ってください。 (2019年2月23日 17時) (レス) id: 3564a3a532 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あき | 作者ホームページ：
作成日時：2019年2月23日 17時
