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「主、帰って来そうな雰囲気はする?」
門の前に立つAの隣で、加州が問いかける。
「まだしない。時空の揺らぎもない」
部隊員達の状態を示すホログラム画面を見つめたまま、Aは動かない。
こんのすけは、政府へと戻り、状況を報告している。
「あのさ、俺たちが助けに行ったりって、出来ないのかな?」
「……一つの時代に、一度に送り込める人数は6人。
それ以上は、時空に負担がかかり、歴史が変わる可能性や、帰還できなくなる可能性が出てくる。
なるべく、危険は犯したくない」
Aが、苦い顔で加州を見上げる。
「助けに行って、加州達が帰ってこられなくなったら、安定や他の皆も悲しむ。
だから……」
「……うん。わかった」
Aの言葉を遮り頷く。
どこか納得しないような、Aが今、本丸にいる刀剣男士達を思っての言葉に、無理やり納得しようとしているようだった。
そんな加州を見て、Aが加州の手を握りながらいう。
「こんのすけに今、私の出陣許可を取りに行ってもらっている。
審神者は、歴史に干渉する確率が低い。
それに、政府が認可した時にのみ使える方法であれば、時空に負担をかけることもない。
許可がおり次第、私が行く。
だから、それまで耐えてくれ」
「うん、ありがとう」
不安を紛らわせるために、Aの手を握り返す加州。
今また、あの時の恐怖を思い出していた。
同田貫は一度折れている。
Aの力によって蘇った一人だ。
日向と浦島は、この本丸がブラックであったことを知らない。
最近、鍛刀された一人づつだ。
もし、彼らが再び折れていたとしても、Aの力によって再度鍛刀する事は可能だろう。
だが、同田貫はもう一度、日向と浦島は初めて、『折れる』という、『死』の体験をさせてしまうことになる。
それだけは、絶対に避けたかった。
「大丈夫だ。
皆、まだ生きている。
私から霊力を吸っているし、決して無事とは言える状態ではないが、怪我も折れるほどの具合までは到達していない」
「うん……」
だが、決して安心できる状態ではない。
こんのすけは、半時前に出て行った。
Aの扱いや、今の状態だけに、認可が手こずっているのだろう。
それがもどかしく、そして、許可がおりなければ出陣できないようになっているシステムが、煩わしく感じた。
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ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 面影草さん» ご指摘ありがとうございます!!修正しました!今後ともよろしくお願いします! (2019年4月3日 0時) (レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
面影草(プロフ) - 政府の役人の黒い部分が見えたり、主人公が感情を覚えてきたことでどんどん面白くなっていて引き込まれるものがあります。誤字だと思うのですが、66話の手元の紙が髪になってます。69話の我々が〜の部分が我々た〜になってますよ。これからも更新楽しみにしてます(^-^) (2019年3月29日 21時) (レス) id: 50c6120963 (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 寧々さん» ありがとうございます(^^) (2019年2月23日 17時) (レス) id: 71334657d1 (このIDを非表示/違反報告)
寧々(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます。続編頑張ってください。 (2019年2月23日 17時) (レス) id: 3564a3a532 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あき | 作者ホームページ:
作成日時:2019年2月23日 17時