■2018年9月 ページ21
9月と言えど気怠い夏の暑さが残る日。
その日も当たり障りのない日だと思っていた。
だけど、少しだけ違和感があった。
通り過ぎる私と澪奈を見る目に、違和感がある。
「ねぇ澪奈。何かおかしくない?
皆の視線がいつもと違うっていうか…」
「…そうかな?気にしすぎだよ」
「ふーん…それもそうか。」
澪奈もそう言うから、気のせいかなって思っていた。
気のせいだって、思いたかった。
.
学校に着くや否や、いつも挨拶を返してくれる香帆や唯月たちに無視される。
聞こえなかったのかな、と思いつつも自分の席へと向かえば、その考えは間違いだったことを思い知らされた。
『バカ』『ブス』『偽りのヒロインズ』『ゴミ風の君』…と散々な内容の落書きが机を埋め尽くしていたのだ。
「うわぁ…これ消えるかなぁ…
澪奈。ごめん、机の落書き消さなきゃいけないから放課後先…行って、て……」
言葉が途切れる。
それと同時に、さくらが登校してきた。いつも通り笑顔で挨拶してくれたのに私達は返せなかった。
「澪奈?小春?どうしたの…何、これ……」
さくらが言葉を失う。
澪奈の机には、私と同じく悪口塗れの落書きがされていた。
「まさかドーピングしてたなんてね」
「そりゃ全国大会も勝てるよな」
「そして東海林はサイコパスの彼女かぁ〜」
「春風の君は清純派だと思ってたのにな」
私達を悪く言う、あからさまな声。
……成程、違和感の正体はこれか。
「ドーピング?サイコパス?ねぇ何の話…?」
「ネットで拡散されてる。この前の大会で澪奈がドーピングしたって。それと、小春が…」
ドーピング?澪奈が?
……ううん、そんなはずない。
あんなに努力してた澪奈に限ってそんなことしない。
そもそもあの水泳部にドーピングする人なんていない。
「…澪奈はやってないよ。だよね?澪__」
「ってない…」
「え?」
澪奈の声が、震えてる。
まるで、泣いているかのようで、思わず聞き返してしまった。
「私は、やってない!!!」
そう叫んで、澪奈は教室から出て行ってしまった。
「澪奈!」
「おい、逃げんのかよ!」
「認めるまでアイツらと喋るなよー?」
「はーい」
私にも目が向けられたが、この際どうでもいい。
「…さくらごめん、先生には腹痛って言っといて。
あーお腹痛いな。澪奈もトイレかなぁ。行ってきまーす。」
「あ、ちょ、小春!待って!」
今は…澪奈のことだけ考えていなきゃ。
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蒼炎 - アンナチュラルも3年A組も好きなドラマだったので、続きが気になります!更新待ってます! (2020年1月12日 22時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
Yui(プロフ) - 続き気になります!更新待ってます! (2019年12月3日 4時) (レス) id: 7c69be82b3 (このIDを非表示/違反報告)
Yuri - いつも楽しく読ませていただいてます!更新、待ってます!! (2019年5月5日 16時) (レス) id: d785c31dd6 (このIDを非表示/違反報告)
中原三日月(プロフ) - 主人公が私の好みです!更新頑張ってください! (2019年4月24日 20時) (レス) id: f8510eae2e (このIDを非表示/違反報告)
かれーこ - このお話好きです!更新頑張ってください! (2019年3月24日 17時) (レス) id: 6209d012cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無音 | 作成日時:2019年3月24日 6時