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「からかうんじゃねーよお前ら!!ったく…悪いな。」
機器をスタッフさんに渡した後、私に向かって頭を下げる天ヶ瀬冬馬。
……いやトップアイドルに頭下げさせんなよ私。
というか私が下げろよ馬鹿。
「いえ!そんな謝らないでください!むしろ私がお礼を言わないといけないんですから!
……あの、天ヶ瀬さんたちは今日、此処でライブするんですか…?」
恐る恐る聞いてみる。
聞いていいことなのかは分からないけど、気になってしまう。
驚いた表情で私の顔をまじまじと見つめた後、
「_あぁ!今日は俺たちにとって、新生Jupiterの始まりなんだ!
アンタも最後まで見てくれよな!!」
テレビでも見たことがないぐらい眩しい笑顔を見せてくれた。
◁▶
アンコール、初めて聴く曲だった。
サインライトが緑色から黄緑色に変わった。
ファンの人も、スタッフの人も……Jupiterも、
お父さんから聞いた。
Jupiterは前いた事務所を辞めて、自分たちの手で、
この場所でライブを続けていたらしい。
疲れているはずなのに率先して準備して、スタッフの人にも感謝して、
たくさんいるファンの人たち一人一人に、ちゃんと向き合っていた。
そして今日、新しい事務所に所属して初めてのライブだったそうだ。
新生Jupiterの始まり。
天ヶ瀬冬馬は確かにそう言った。
そんな天ヶ瀬冬馬の顔は、テレビ越しで観たときよりずっと眩しかった。
ずっと、ずっと、
「きらきら、してる……」
私の心に空いた穴が、埋まっていく。
埋まって、満たされて、心をじぃんと暖めていく。
__アイドルって、すごいなぁ。
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