【刀剣乱舞】楽屋雀、いざ参らん

十六話*「おいしい」 ページ19

何も言えなくなった私達。
沈黙が本丸を包む。






…口を開いたのは、此岸さんだった。



此岸「確かに、刀は腹は減らないな。






けどな、人間は腹が減るんだ。
嬉しい時も悲しい時も減る。







…大切な物を失って、何もなくなった時も減る。







それが人間なんだ。悲しいけどな。








お前らも今は人間だろ?
今くらいは人間らしい事しろよ。」




そう言って、鮭の切り身が入った
おにぎりを頬張る此岸さん。

…ていうか何個目ですかそれ。






此岸さんの言葉に刺激されたかのように、
刀剣男士の皆さんは、恐る恐るおにぎりを手に取った。




そして、口にした瞬間…




「うぅ…っ」

「あ、あぁ…」





皆が、涙を流していた。
そして…






「なぁアンタ、教えてくれ。
この握り飯を食ったら、とても幸せな気持ちになる。





口いっぱいに広がるこれは、一体何なんだ…?」



薬研くんの言葉は、他の人達にも聞かれた。
この感情?この気持ち?







違うかもしれないけど、


『それはね、【おいしい】って言うんだよ』

「おいしい、かぁ…そうかぁ…」




その後も、皆おいしい、おいしいと嬉しそうに言っていた。


どうしよう、それだけでも嬉しいな。

十七話*数日後→←十五話*知らない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す