その一杯に、心、揺れて (ページ8)

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その後も、翔太と一緒に食卓を囲むという私のささやかな夢は、見事に敗れ続けた。
早く帰れそうだと言われた日には、翔太の好きなものを作って待ってるからって約束したりもしたのに、それでも結局ダメだった。

しかも、彼はそのことを謝りもしなかった。
仕事が押しただの、急に先輩に誘われただのと悪びれもなく言う。
　
(やっぱり翔太は私のことなんて…)
考えれば考えるほど気持ちが沈んでいった。

そんな事がまた暫く続いたある日。
例によって翔太は帰ってこないけれど、その日は何だか皿を片付ける気力もなくて、テーブルについたままぼんやりと彼を待っていた。

nb「ただいまー。あれ、まだ起きてたの？ってか俺飯食ってきちゃったんだけど」

しかし、ようやく帰ってきた翔太は、沈む私を意にも介さず、しれっとそう言ったのだ。
その顔を見て、何かが弾けた。

「なんなの…？」
nb「え？」
「私のことなんて、もうどうでもいいわけ？」
nb「何、急に」
「だってそうじゃん、いつも私のことなんかそっちのけで、約束だって平気で破られて…私がどんな気持ちでご飯作ってたか、どんな気持ちで待ってたか、わかる？」
nb「しょうがねぇだろ。俺だって色々あんだよ」
「色々って何よ、もう私といたくないならハッキリそう言ったら？」
nb「はぁ？何だよそれ」

違う、そんな事が言いたいんじゃない。
私はただ…

しかし、一度ブレーキの効かなくなった私の口からは、次々と思ってもない言葉が溢れ出す。
売り言葉に買い言葉で、最後には怒鳴り合いの喧嘩になって、すごく悲しいのに、止められない。

nb「もういい」

ついに家を出て行った翔太。でも私はそれを引き留めることが出来なかった。