その一杯に、心、揺れて (ページ5)

今日:7 hit、昨日:5 hit、合計:26,273 hit

. ページ5

.

目を覚ますと、知らないベッドの上だった。

「あれ…？」

ぼうっとする頭で部屋を見回す。
見慣れないカーテン、積み上げられた雑誌。
そして、その次に目に入ったのが、ソファに丸まって眠る目黒の姿だった。

それでようやく自分のしでかした事を悟った私は、ひとり慌てふためく。
大丈夫、服は着てる。
大迷惑はかけたけど、間違いは断じてなかった、はず…！

とはいえ失態に変わりはない。
書き置きでも残してさっさと去るべきか、それとも、せめてお礼くらいはきちんと言うべきか…

迷いながら、なるべく音を立てないようにベッドを抜け出した、つもりだったのだけれど、

mg「あ、起きた？おはよ」

生憎、今ので目黒は目を覚ましたらしく、モゾモゾと体を捩ってこちらを向いた。

「あの、目黒、ごめんね、私…」
mg「…あの後のこと、覚えてる？」
「えっと…ごめん」
mg「飲み会終わった途端にぶっ倒れるとか…マジ焦った。あんな時間だし他に誰もいねぇし、しょうがねぇから俺んち連れてきてやったけど」
「そっか…本当、ごめんね。ありがとう。お礼はまた今度させてもらうから」

予想はしていたけど、面と向かって言われるとまた罪悪感が募った。
居た堪れなくなった私は、とにかく早々に退散しようと立ち上がる。

しかしその時、目黒が私の腕をパッと掴んだ。

mg「待って、」
「ん？」
mg「あのさ、」

ああ、流石に呆れられたよね。何言われるんだろう。
まあ、こんな状況じゃ、何を言われても縮こまって謝る他ないけれど。

mg「…Aさ、無理しすぎ」
「ごめん」
mg「あーっと、謝って欲しいわけじゃなくて、何つうか…Aが頑張ってるのは知ってるつもりだけど、こう、もっと俺に頼ってくれたら、嬉しいかな、なんて…」

尻すぼみなその言葉と、少しだけ赤く染まった彼の頬に、何故だかまた心が乱される。

「…いやいや、目黒そんなこと言うキャラだっけ？でもありがと、また週明けにね！」

柄にもなくバクバク言い始めた心臓の音に気づかれないように茶化して、そそくさと部屋を出る。
あれもこれも、きっと気のせい。そうに決まってる。
あいつはただの同期、あいつはただの同期…

そんなことを頭の中で唱えながら、私は駅までの道のりを足早に歩いた。

【mg×ビール×同期_fin.】