こだわりの一杯 iw ページ27
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雑誌社の花形といえば、ファッション誌の編集部。
ここでの仕事は、私の長年の夢だった。
ファッションに目覚めたのは中学生の頃だっけ。
『ねぇこのワンピースめっちゃ可愛くない?』
「あーいい!でもこっちも良くない?」
『てかミカが着てたら何でも可愛く見えるー、どうしよう』
「だからー、ミカよりナツキの方が綺麗だって」
少ないお小遣いをやりくりしてファッション誌を買い漁り、友達と服の話やらモデルの話やらをとめどなく語り合う時間が一番の楽しみだった。
その情熱は大人になっても変わらなくて、いつしか読むだけでは飽き足らず、作る側への憧れを抱くようになっていた。
だから、就活も雑誌社一直線。
思いが通じて入社がかない、昔読んでいたあの雑誌に配属になったと聞いた時は、飛び上がるほど嬉しかった。
なのに、なのに…!
『というわけで、この編集部は一旦は解散となりますが、それぞれの場所で力をつけて、またいつか集まれることを願っています』
入っていくらもしないうちに、出版不況のあおりだか何だかで、私たちの雑誌は廃刊を余儀なくされた。
楽しかった編集部もみんな散り散りになってしまった。
そして、私が異動になった先は何と、日本の伝統文化に関するカルチャー誌…?
今まで流行の最先端を追いかけて来た私にはまるで縁のない話だし、興味だって全然わかない。
そもそも、編集部もオジサンばっかりで、知らないけどきっと読者もそうで、私はその中で完全に浮いた存在だった。
いくら私が入社間もないからって、何にも染まってないからって、こんな人事流石に酷すぎると思わない?
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作者名:わかめ | 作成日時:2021年3月11日 20時