その一杯に、心、揺れて (ページ24)

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会も中盤に差し掛かった頃、ふと会場を見渡して、ある一点に視線を持っていかれた。
会場の隅っこで、手持ち無沙汰にコーラのグラスを揺らす彼。
…そういえば、彼は昔からコーラが好きだったな。

「来てたんだ…」
『ん？どした？』
「いや、何でもない」

彼__佐久間は、私の幼馴染だった。
小さい頃は一緒に泥だらけになって遊び、揃って親に怒られたような仲だ。
しかし、異性ということもあって次第に距離が出来、高校に上がってからなんて多分まともに喋っていない。

…いや、正直に言おう。
佐久間と喋らなくなった最も大きな理由は、彼が高校でちょっと浮いていたからだ。

私の所属するグループの人間にとって、彼は積極的に関わりたい部類の人間ではなかった。
私は別に彼のことは嫌いじゃなかったけれど、下手に親しくしてせっかく築き上げたクラスでの地位を失うのが怖くて、わざと彼を避けたことも一度や二度ではない。

しかし一方で、私は彼を羨ましくも思っていた。
疎まれてもめげずに言うべき事は言う。
好きなもの__彼の場合それはアニメだった__がちゃんとあって、誰に貶されようと堂々としている。
そんな強さが羨ましかったし、何ならちょっと惹かれてもいた。
でも、あの時の私には、その気持ちは決して口に出してはいけないもののように思えていた。

大人になった佐久間は、あの頃より随分垢抜けていた。
同窓会と聞いて多少気合を入れて来たのだろうか、かわいい柄の入ったスーツを着ていて、それがまたよく似合っている。

その姿と手に持っているコーラは何だかアンバランスだったけど、それすら彼らしさの表れのようだった。
お酒、苦手なのかな。
それにしても、こういう時くらい飲めばって思うけど…彼にはそんな空気とか忖度とかは通用しないのだ、多分。

今更だけれど、何だか無性に彼と話してみたいと思った。
私がずっとずっと探している「自分」ってものを、彼はきっと持っているから。

あの時は勇気が出なかったけれど、大人になった今なら、素直に話すことが出来るかもしれない。
というより、やらなきゃいけない。
そんな風に思った。