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『うわー、久しぶり!』
「久しぶり。みんな大人になったねぇ」
『そっちこそ、すっかり東京の人だねぇ』
たどり着いた会場は、この街で唯一と言っていい高級ホテルのホールだった。
昔はここが憧れの地だったけれど、今となっては田舎臭い建物だと思うばかりで、そのことが、地元と離れていた期間の長さを改めて感じさせた。
早速私に気づいて呼びかける彼女は、既に少々酔っているようだ。
傾げられた首からキャピって効果音が聞こえそうでげんなりする。
かつて私たちのボスだった彼女も、今じゃ2児のママだっけ。
それなのに、喋り方は高校生の時からまるで変わっていなかった。
私は手近なグラスを手に取ると、高校時代を思い出すように、適当に輪の中に入る。
中身のない会話を繰り広げながら、私はやっぱり最低だなぁ、なんて考える。
久々に友人と再会したというのに大した感慨もなく、こんなことばかり考えているのだから。
私だってあの頃とおんなじ、空っぽのままだ。
いつまでも変わらない彼女たちのことを馬鹿になんて出来ないのかもしれない。
『私も行ってみたいなぁ、東京』
話の中で、彼女らはしきりに私のことを羨ましがった。
地元にとどまった人間に言わせれば、私は東京暮らしというだけで憧れの的なのだと。
「そんないいもんじゃないよ」
確かに東京には、ここにはない色んなものがあった。
それなのに、私の欲しいものは何にもなかった。
…でもそれは、きっと東京が悪いんじゃない。
苦い顔をして言った台詞は本心だったけれど、彼女たちはそれを謙遜ととったようで、茶化してまたお喋りに花を咲かせるだけだった。
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作者名:わかめ | 作成日時:2021年3月11日 20時