懐かしき一杯 sk ページ22
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今日は高校の同窓会。
5年ぶりに帰ってきた地元は、きっかり5年分寂れていた。
この駅も商店街も、懐かしい景色のはずなのに、どこか私を歓迎していないように感じて心がざわめく。
高校には、正直あまりいい思い出がない。
と言うと各所から怒られてしまうだろうが、これが私の素直な気持ちである。
昔から両親と折り合いが悪く、家が息苦しかった私は、せめてクラスでは浮くまいとして、居場所を作ることに必死だった。
クラスの中でも派手な子たちのグループに所属して、そのボス格の子に媚びてイケてる人間のフリをして、人気者の地位を守ることしか頭になかった。
その努力の甲斐あって友人には困らなかったし、それなりに快適だったけれど、いつもどこか虚しい、そんな3年間だった。
彼氏は結局作らなかった。
こんな最低な人間に寄ってくる男になんか興味は湧かなかったから。
いや、それは建前だって、自分でもわかっているのだけれど…
そんなだったから、卒業後は地元から離れたい一心で意味もなく東京の大学を目指した。
そして、大学でも結局やりたいことは見つからなくて、流されるままに適当な会社に就職した。
それからはずっとこの土地とは疎遠だ。
今回だって帰る気はなかった。
ただ、ちょうどいい具合に親がお見合い話を持ってきて、断りきれずに会う羽目になったものだから、地元に帰るついでに同窓会にも顔を出すことにしたというだけだ。
私は一つ溜息をつくと、バッグを抱え直して同窓会へと急いだ。
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作者名:わかめ | 作成日時:2021年3月11日 20時