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いつもの一杯 fk ページ18

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正直、コーヒーは苦手だ。
でも、あの人に近づきたくて、私は今日も、コーヒーを飲んではその苦さに顔を顰めるのだ。


このカフェでバイトを始めて早1ヶ月。
そろそろ、毎日のようにここを訪れる常連さんの顔はわかるようになってきた。

私が最初に覚えたのは、あのひとだった。
スーツを纏った華奢な体にふわふわの髪の毛、そして何より、ちょっと不思議な眼が特徴の、かっこいい彼。


月曜から金曜の、午前8時半。
その時間に、名前も知らない彼は、いつもブラックコーヒーをテイクアウトしていく。

fk「コーヒーひとつ」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、苦い苦いコーヒーを用意するのが、最近の私の日課だった。
すると彼は、カップを差し出す私にニコッと笑って、ちょっと舌っ足らずな声でありがとぉって言ってくれるのだ。
それを聞くだけで、立ちっぱなしできついカフェでの仕事も頑張れる気がしていた。

私が苦手なコーヒーを飲めるようになりたいと思うのは、九割方彼が理由だ。


それなのに、今日は彼が来ない。
別に毎日来るって決まりがあるわけでもないけど、いつもあるものがないと、何だか落ち着かない。

まさか、何かあったとかじゃないよね?
…なんて、名前も知らないくせに、勝手に心配なんてしちゃって。


『ほらほら、Aちゃん。集中して』

唯一事情を知る先輩に苦笑されつつ、なんとか業務をこなす。
でも、シフトの間中、彼のことが頭から離れなかった。
一体どうしちゃったんだろう…?

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作者名:わかめ | 作成日時:2021年3月11日 20時

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