その一杯に、心、揺れて (ページ1)

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さりげなく一杯　mg ページ1

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今にも限界を迎えそうな吐き気、フワフワする視界。
目の前には、我が営業部長が圧の強い笑顔で差し出すジョッキ。
わたくし、入社以来最大のピンチです。

時を遡ること数時間前、営業から戻ってオフィスで書類整理をしていた私たちに向かって、部長がこう叫んだ。

『おい、〇〇商事の件、うちに任せてもらえるってよ！』

それは、私が初めて中心になって進めた企画が採用されたという知らせだった。

社会人3年目。
新人で配属された営業部の仕事にもようやく慣れてきたところだ。
そんなタイミングで初めて任された企画は、私にとってまたとないチャンスであり、同時にプレッシャーでもあった。

ここで出した結果が、今後のポジションを決める。
そんな風に気負って、時には残業を重ね、やっとの思いで完成させた企画。
ついに今日、それが実を結んだのだ。

mg「A、おめでと。良かったな」
「おー！ありがとう！」

早速声をかけてきたのは同期の目黒。
チームも違うし、正直そんなに関わりがある訳ではないけれど、こうして直接祝ってくれる辺り、結構律儀な奴だと思う。

『よっしゃ、今日は皆でお祝いするか』

一方、ご機嫌でそういう部長には、少しだけ嫌な予感がする。
と言うのも、部長は典型的な体育会系で、何ならパワハラアルハラ上等の前時代的な考えの持ち主だからだ。

今まで、彼に酔いつぶされた人間は数知れず。
それを何の悪びれもなくやるんだから、全くタチが悪い。
しかも、この流れなら、多分今日狙われるのは私だ。

随分気合の入っているらしい上司の掛け声をきっかけに支度を始める皆。
それを見て、私はひとりげんなりとしていた。