Wolf Ⅱ (ページ10)

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「あの...、掟破ったの何回って言いました...？」

『ええっと、2回』

一回は私だろう、でももう一回は...？

聞きたかった。多分彼なら知ってる
でも何かが私の中で聞くな。やめろといい、怖くなった私は聞くのをやめた。

受け応えてくれた彼の言葉を私が無視する形となり、二人の間に沈黙が流れた。

重い雰囲気をどうにかしなきゃとは思いつつも、無理やり口を開こうとした、が

それよりも先に私に放たれた声。彼だった。

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『ねぇ、やっぱり呼び捨てで呼んで欲しいです』

「え...？」

思ったよりも和んだ話
きっと重い空気を良くしてくれようとしたのかもしれない。

『何か、“くん”付けられると性にあわないんですよね』

「でも私より年上ですよね...？」

『この業界では歳の関係云々より、立場で上下が決まりますから。
俺にとってAさんは立場、上ですもん』

「いやっ、でも」

『敬語も外してください。』

「そうすると私、生意気じゃない...？殺されない？慎くんに」

『え、Aさんにどう写ってるんですか、俺(笑)殺し屋ですけど、そんな器ちっちゃくないっすよ？』

「慎くん、殺し屋に見えない...」

『呼び捨てにしてくださいって...。あっ、それよく言われます。特に北人さんとか』

「やっぱり」

『やっぱりって何ですか！？(笑)』

私も決して饒舌という訳でもないし、どちらかと言えば人見知りな方。

でも気がつけば慎くんと上手くうちとけていた。
そして弾む会話の中、彼の全力な拒否に耐えきれず“慎”“A”と呼び合うように。

いつしか話し方も改まった言い方や敬語が外れた。

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「ねぇ、そろそろ離れてもいいんじゃない？」

『なんで？』

「いや、物理的距離はもういいでしょ。結構話せるようになったんだから」

『えぇ...』

頭の片隅にはいつだって“彼”がいたけど、
慎と話してると少しだけ忘れられた気がする。
涙も無くなった気がした...。

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