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ｶﾞﾁｬ＿＿＿＿＿＿
『A、お風呂入っておいで...？着替えは持っていくから』
気まづい空気というより、なんとも言えない空気が流れたまま帰宅。
あの後、彼は逆に何も聞かずそのまま再び手を引いて歩き出してくれた。
二人の間を吹き抜ける風邪は冷たかったけど、触れ合う指は何故か熱く感じた...。
「...ぅん...。」
彼の気遣いに短い声を出すと、おぼつかない足のままお風呂場へ向かった。
＿＿＿＿＿＿＿
洗面所のドアを開けて少し進むとすぐそこにあるお風呂場のドア。
私はそのドアの前で立ち止まり、赤に染るTシャツに手をかけた。
布に手が触れる度、つまった鼻の間からかすかに感じる血の匂い。
そしてまだ乾いていないのか、手にべっとりの着く感覚。
気持ち悪かった。
気持ち悪くて、仕方なくて、
私は一目散にTシャツとジーンズを投げ捨てた。
脱いで現れた私の下着。
慎と一緒に買いに行った時、この下着は綺麗な白色だった。
でも今は...。
真っ赤に染る下着と、肌にまでもついている血
いつの間にこんなに血がついていたのだろう。
あの時だ...。
彼が居なくなり、泣いて泣いて...
力尽きた時、体は涙の落ちた血溜まりへ。
「ぃっ...や...」
その時の記憶と感触、そして感情
全てが瞬間的に湧き出る。
“もう...来るな”
その言葉も強さを増す。
すぐ消し去りたかった、無くしたかった。
私は震え出す体を無理やり持ち上げ、勢いよくお風呂場へ入る。
そして下着のまま、なんにも考えずただ蛇口を捻った。
ｼﾞｬｧ＿＿＿＿＿＿
床にうずくまった私に冷たい水が降りかかった。
でも冷たさなど気にしなかった、早く消し去りたくて。
彼と会えて嬉しかった。生きてて、この目で見れて嬉しかった...。
でも彼は変わった。
「変わっちゃった...」
見ればわかる。違かった。
流れる水に、
溢れているのかもわからない涙
震える体
“あの日”、彼と出会ったばかりのあの日と同じ状況に、余計に頭が彼のことでいっぱいに
・
“もう...来るな”
嫌だ...
“来るな...”
行かないで...
詰寄せる感情に頭を抱えた私の意識は途切れる寸前。
水の冷たささえも感じられない
涙すらもわからない。
なんにも分からなかった。
・
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作者名：M谷
| 作成日時：2020年1月22日 19時
