Wolf Ⅱ (ページ30)

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想いの空振りページ30

＊

とぼとぼと歩く私を、すれ違う数人が眉間に皺を寄せて見た。

まるで私を軽蔑するような。

センター街のど真ん中にいる私は、彼のパーカーを持ち、
Tシャツとジーンズには大量の血、ジーンズから出ている肌にも私のものではないものがベッタリと...。

髪の毛はボサボサで涙で顔もぐちゃぐちゃになっていて、どうも直視できる身なりではなかった。

鼻をすすりながら、彼のパーカーを力強く抱きしめる。

その度に彼の温かさが私を包んでくれてるようで、さらに涙がこぼれた。

・

『A...？』

そんな時、俯きかけた私にかけられた声

それは本当に目の前から。

「まこっ...とっ...？」

私は顔を上げると、その声の持ち主が見えた。
私はその名前を呼ぶ。

・

目の前にいるのは息を切らせたまぎれもない慎だった

髪の毛を荒らして、目を少し充血させて、なんとも寒い薄着で。

額にはうっすらと滲む汗も見て取れた。

「なんでっ...？」

慎、というか誰にもここに来ることは言っていないし
バレないように来たつもりだった。

でも、“なんでいるの...？”

『目覚ましたら、いないしっ...。北人さんは、寝てるし...』

慎はその場から1歩ずつ私に近づいた。
そしてその距離はどんどんと縮まっていき、慎の口から出る白い息が私の髪の毛を揺らす。

お互いのダボッとした服の裾が触れ合った...

「んぐっ...」

そのまま彼は私の手を引く
そして、私を強く強く抱きしめた。

息なんて出来ないくらい。
涙なんて頬に流れる前に彼のシャツに滲むくらい。
私につく血の匂いが慎に移るくらい...。

慎は私の髪の毛に唇を埋めると耳元に近付けた。

『勝手にどっか行かないでよ...』

慎の声は震えていた、耳に触れる唇も...。
彼の吐息が耳にかかると同時に、背中に回る腕がより強くなる。

「まこっ...、くるっ...しっ...」

ぎゅぅぎゅぅ締め付ける腕の力に、息をするが間にならない。

でもその私の声に慎は抱きしめるのをやめない
そんな様子に私は再び声をかけようとした。

が、やめた…。

「どうしてっ、泣いてるのっ...？」

慎が理由もわからず泣いていたから。

・