Wolf Ⅱ (ページ27)

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前の様子を探ろうと足を1歩前に踏み出した時、つま先に何かが当たる。

そして、血の独特な匂いが鼻をかすめると共に、急に頭上の街灯が点灯を始めた。

驚きのあまり突発的に下を見ると、そこには倒れている男の人が映った。
ピクリとも動かず、首筋の辺りからは流れ出る大量の血。
その姿に短い悲鳴が漏れた。

“うがっ...はっ...”

そして尚も聞こえるその薄気味悪い叫び声
その声は目の前まで迫っていた。

怖い。怖かった。
でも、私は顔を恐る恐る上げる。
何故かなにか乗ってるかのように首が思うように動かなかった。

「っ...」

重たい首、そして瞼が上がった時、私は言葉を失う...。

視界に映るそのショットに涙が一筋零れた。

私は下に死体があるのにも関わらず、その場にしゃがみこむ。
ドロっとした血の感覚が顕になっている足を伝った。

膝を着くとびちゃっという水音がなり、背中に走る鳥肌
先程よりも強く香った血の匂い...。

そして...

「あっ...」

動かない口が、心の叫びを発させる。
目の前にあるその探し求めていた背中は、その姿は...。

涙が血溜まりの上に落ちていった...。
叫べないその言葉が儚く空へ消えていく...。

彼は誰かも分からない男へナイフを振りかざしていた...。

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彼のナイフが目の前の男に深く突き刺さり、視界に赤い血が舞った。

男の体が地面へ落ちると共に、その衝撃で鈍い音が道に響く。
それを境に不気味な叫び声はその音を止めた。

人が殺されていく景色から何故か目が離せなかった。
そんな私に“彼の視線”が少しずつ少しずつ向いてくる。

フードと変わらなく長い前髪からの視線の圧倒的な怖さに足がすくみそうになる。

でもそれを必死に耐え、彼を見つめるのを辞めない。

遠くからでも分かるほど、
そうどんなに距離があってもわかるほど、

彼の瞳は、昔の彼の瞳ではなかった。

数回、私は彼の瞳の奥底でなにか黒いものを見た気がした。
しかしそれは一瞬にして消えて、私に正体をいつも見せてくれない。
でもその正体がわからないものが、今や彼の瞳の全てを支配してる。

要するに彼は黒かった。
綺麗に赤く色付く彼ではなかった。

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