Wolf Ⅱ (ページ24)

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涙の向こうの本音ページ24

＊

「北人っ...さん...？」

私と北人さんの間に手を滑り込ませ、くっつく体を剥がそうとするがビクともしない。
それどころか余計に抱きしめられる力が強くなるばかりだった。

『お願いっ...。離れないで...』

弱々しく泣き声のまじる北人さんの声
耳元に吐息がかかる。

それを感じると、だんだん抵抗する力は無意識に弱くなった。

『俺ね、初めて壱馬以外の人から“必要”だって言って貰えた...』

「えっ...？」

少し時間が経ったくらいだろう

ボソッと話し始めた北人さんは、尚も私の体を締め付けている。

『壱馬が居なくなって、俺生きてる意味なくなっちゃったって思ってっ...。

だから壱馬を探すことがっ、今の俺の生きてる意味だって...勝手に思い込ませてた...』

「北人さん...」

『怖いよ...。掟破って死ぬのとか、怖くないわけないじゃんっ...。

でもっ、俺なんかを唯一必要だって言ってくれた壱馬のためならっ...ためならって...』

北人さんのせつない吐息を感じる。
彼の一言一言が胸に刺さって沈んでいった。

『俺っ、一人じゃなんにも出来ないんだよっ...。そんな弱いやつなんだ...。
だから、無意味にAちゃんにあたってっ...。ごめんっ...』

小さなその声はだんだんと小さくなって、やがて涙となって私の肩を濡らした。
肩に感じる冷たさが、北人さんの苦しさを物語り、それが私の心を締付ける。

この人は少し私の似てる気がする...。

あの人への想い、決して一緒にしてはいけないと思うけど、そう感じた。

でも、北人さんは私よりも強かった。
私は“彼”がいない今、自分で生きる意味を探し出すことが出来ないでいる。

北人さんはどうだろう...？
ちゃんと生きる意味を見つけてる
そのために努力してる。

北人さんはひとりじゃ何も出来なくない...。
私なんかより...ずっと...

・

「そんなこと、ないです。」

『...』

「北人さんは一人じゃなんでも出来ない人じゃないです」

私は体の間に挟まっていた手を抜くと、北人さんの背中に回した。

・

「北人さんは私なんかより強くて、すごくて...。
私はあの人のためになんにも出来ないけど、
北人さんは毎日頑張ってた...、必死に生きてた。｣

少しずつ私の目から再び涙が溢れる。

・