Wolf Ⅱ (ページ16)

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『ん？』

なかなか言葉を口にしない私に、北人さんは首を傾げながらこちらを見る。

恐らく目の焦点があっていないのは私なのかもしれない。
どこを見ればいいのかわからない、自分でもどこを見ているのかわからない。

先程まで起きていた出来事を頭が上手く処理できず、すぐにきちんとした言葉が出なかった。

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「＿＿＿＿かずっ...まっ...。北人さんっ...」

出たのは途切れ続ける単語。

上手く言えなくて、ただ感情が先に出てしまう。
涙が、言葉より先に流れてしまう。

「壱馬っ...」

『壱馬がどうしたの...？』

目もつけられないような辛そうな顔をする北人さんだけれど、けして優しい口調を崩さなかった。

優しく“どうしたの？”というその声は、少しずつ私の心を落ち着かせていった。

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「北人さん...」

『なに？』

「彼がねっ...、いたの...さっき...」

やっと口にできた私の言葉に、表情を変えた北人さん。
悩ましげな顔が見て取れた。

・

『それって...ほんと？』

少し震えたその声。
私は首を縦に動かした。

それを見た北人さんは、ひとつため息をつくと回転椅子を動かしてパソコンと再び向き合う。
そしてそのすぐ後にキーボードの音が鳴った。

『見たのって、センター街？』

「なんで知ってっ...」

・

私の言葉の語尾は、北人さんが叩いた強いEnterキーの音のせいでかき消される。

そして体はそのままで顔だけこちらに向けると、顎を使い“画面を見て”と私に指示した。

『最近ずっと壱馬のこと調べるために色々手をつけたんだ。そしたらね、ここ数日変なんだ』

「変...？」

『これ見て』

私は北人さんの側へ寄るとそのままパソコンの画面に視線を送る。
そこに映っていたのはなんかのグラフみたいな表みたいな...。
イマイチ読み方がわからず、理解ができないようなものだった。
しかしそれよりも、そのよくわからない図の題名に目がいった。

「“殺人件数”...？」

『そう。これはセンター街のね。少し分かりずらいかもしれないけど、ここの数値が大幅に上がってるでしょ...？』

北人さんが指した先にある図の1部。
私は目を細めながらその小さい数字を読み取った。

「ほんとだ...。でもそこまで大幅じゃなくないですか？４、５人くらいですよね｣

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