Wolf Ⅱ (ページ11)

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黒い背中ページ11

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北人さんが作業を始めて幾日経っただろうか。

北人さんは自分で言った通り、四六時中パソコンと向かい合い、ろくに食べ物も口にせず、
ただ何かと葛藤するかのように顔を歪ませているだけだった。

そんな様子を見る度に私の無力さ、そして何も出来ないことに対する罪悪感が胸を締め、北人さんへの申し訳なさが募るばかりだった。

でも、ブラックになりかけている心をいつも明るくしてくれたのが慎だった。

北人さんから私のお世話係と言われているのに料理が不得意で、
私はよくあいつに無理やりやらされてたせいか嫌でも得意だったから、2人でご飯を作ることが多かった。

慎はたくさんの話をしてくれた。

裏社会に一人暮らしは怖くて、北人さんの家に居候してること

実は北人さんが女々しいこと

慎はよく裏社会をぬけて、普通に表社会へ買い物とかに行くこと

スニーカーとかファッションが好きなこと

そして...“彼”のこと...。

彼は殺し屋界でも一流の存在で、日々依頼が絶えないという。
裏社会では“壱馬”という名前ではなく、血に濡れて赤くなった狼という意味を込めて“Red wolf”と呼ばれているらしい。

慎の話を耳に入れる度、彼の血にまみれた姿が頭に映し出された。

私の頭にはいつだって彼がいる。

それは北人さんの苦しげな姿を見るとより鮮明に脳裏に浮かんだ。
目を閉じる度、夜を迎え夢の世界へ入る度、暗闇に映る彼の姿はどうしても薄めることが出来ない。

慎のおかげで一時期よりはマシになったが、それでもその症状は重症だった。

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「うっ...！」

今日も例に外さず、嫌な朝の目覚めを迎える。

毎回決まった夢。工場の床に広がる血と、切れたネックレス。
何故か頭にこだまする彼の叫び声。

上半身を勢いよく起き上がらせると、背中に沢山汗をかいている感覚があって気持ち悪かった。

耳には微かにカタカタっというキーボード音が聞こえるため、
恐らく北人さんが寝ずに作業してるのだろう。

そして、目を数回開けたり閉じたりして、ふと額の汗を拭うと、耳に声が入った。

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