Wolf Ⅱ (ページ2)

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あなたのいない世界なんてページ2

＊

「北人さん...」

北人さんは謝りの言葉を口にしながら、腰を下げ私と目線を合わせた。

＊

嫌な夢を見た。
“彼がいなくなる夢”
夢が覚めたはずだが、彼はいない。

＊

「壱馬は...？」

信じたくもないし、現実だって思いたくもない。

でも、無言で首を横に振る北人さんを見たら一気に現実が押し寄せてきたかのように感じた。
北人さんの複雑な表情が色んな記憶を呼び起こす。

電話から流れたどす黒い声
床に広がる赤い血
誰もいない倉庫

そして切れたネックレス

チャラ＿＿＿＿＿＿＿

それを思い出した瞬間、手に握っていた何かが音をたてた。
ゆっくりその手を開く。

・

「うっ...」

指の隙間から見えた光に反射し光沢を持った金属。
少しずつ顕になっていくネックレス。

一際異彩を放つ十字架が瞳に映った途端、私の目からは涙が溢れ、口からは嗚咽が漏れた。

際限なく出てくる涙がネックレス、毛布、手、服、色んなものを濡らしていく。
そんな私に、北人さんは何も言わなかった。

・

嫌な夢を見た。
“彼が居なくなってしまう夢を

でも夢じゃなかった。

・

殺し屋は契約中は依頼者を殺しちゃいけない、契約も破っちゃいけない
北人さんはそれが裏社会のルールだって言った。
彼は私を守るためにおじさんを殺した。
じゃあ、ルールを破ったら彼はどうなるのか...？

彼はもういない。死んだ。私のせいで...。

・

「全部っ、私のせいだ...」

私は姿の見えない愛しい背中を思い浮かべ、強くネックレスを握った。

・