Wolf (ページ5)

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「きゃっ...」

部屋を出て少し廊下を歩くと、角にあったドアに押し込められる。
勢いのあまり床に倒れ込み、体に衝撃が走った。

『血、くせぇ』

倒れた私の腕を再び掴むと、そのまた奥にあったドアを開け私を中に入れる。
目を開けるとそこはバスルームだった。

『血の匂い、なくせ』

それだけ言うと、私を残して思いっきりドアを閉めた男
その後にもう一度ドア閉める音がして、恐らく廊下に出たのだろう。

バスルームを見渡すと無造作に置かれたシャンプーと椅子がぽつんとあるだけの殺風景
お湯なんて浴びなくない気分だった。
でも数日も浴びてないせいか無意識にパーカーのチャックを下ろす手。

目の前の鏡に自分の身体が写った。

「っ...」

嫌でも目に入るその印。
いらない記憶をフラッシュバックさせた。
思わずチャックを上にあげ、胸に手を当てる。
早くなる鼓動。荒くなる呼吸。

止まって欲しいその症状に耐えられず、目の前にあった蛇口を回す。
丁度の位置にあったシャワーからは冷たい水が流れ出た。

髪も濡れ、服も濡れ、下着も濡れ、
“冷たい”
そうとしか感じなくなった時、涙が水とともに頬を伝った。

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