Wolf (ページ25)

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『おっ終わった...』

北人さんが顔に汗を流し続けて数十分。
血だらけの手を上にあげた。
隣に横たわる彼の左腕には包帯が巻かれている。

私は安心のため息と共に、北人さんに水を差し出した。

『Aちゃんもありがとう』

「...」

“いいえ、そんな”
そんな意味も込めて首を横に振る。

『ほんとに、壱馬にはビックリさせられっぱなしだわ...。』

北人さんは私からお水を受け取ると、グビっとひと飲みした。
そして彼の頭を軽く叩くと、笑みを浮かべる。
私が隣に座ると、その笑みのままこちらを向いた。

彼が怪我した原因は、銃で打たれたかららしい。
処置をしている時、北人さんが教えてくれた。
幸い玉は残っていないし、大事になるような血管なども傷つけていなかったが、何しろ出血が酷かった。

“なぜ”“どうして”という疑問も頭を駆け巡ったが、彼が無事だったということにそれは少し小さくなった。

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『銃で撃たれてるから、多分この後高熱が出ると思う...。』

「えっ...」

『俺、仕事あって帰んなきゃいけなくて...。ごめん...』

北人さんはそう言うと、私に飲みかけのコップを渡した。
そして壱馬の頭をクシャっと撫でると、脇に座る私を置いてリビングのドアに手をかける。

『なんかあったら、また呼んで...』

北人さんはこちらも見ずに言うと、そのまま廊下に出ていってしまった。
数秒後聞こえたドアの閉まる音。

彼の規則正しい息だけが部屋に響いた。

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