Wolf (ページ3)

今日:43 hit、昨日:69 hit、合計:524,456 hit

＊ページ3

＊

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

「死にたい」

あいつが死んだ今、尚更生きる意味などない。
口から出た“死にたい”という言葉は、涙とともに流れ出た。
抱える服を強く握り、男の目を強く見つめ返す。

沈黙が流れた。男は目を逸らさない。
一瞬その瞳の奥に黒い何かが通り過ぎると、すぐ見えなくなる。
その瞬間、男は口を開いた

＿＿＿＿＿＿＿

『＿＿＿＿＿＿＿＿あんたは殺さない。』

「...」

男は手に持つナイフをしまう。
そして来ていた黒いパーカーを脱ぐと、私に着せた。

私を包んだ香水と血が混じった匂い。

黒いTシャツ姿となった男は立ち上がると、私の腕を首にかけさせる。
膝の裏に腕を入れると、横抱きにした。

長い前髪から覗く瞳が尚も私を見る。

いつの間にか私の体の震えは止まっていた。

私は行き場を無くしていたもう片方の腕を、男の首に回す。

この行動に意味なんてない。
そう思う。

でも、死にたい私を生かしたこの人に、生かした責任を取ってもらいたいと思った

男が歩くと共にぴちゃぴゃとなる血の音に、私は意識を手放した

＊