Wolf (ページ17)

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『ねぇ、Aちゃん？』
「っ…！！」

隣にぴったりとくっつく男は私の髪の毛を耳にかけながら、耳元でつぶやいた。
吐息がダイレクトにかかり、くすぐったいのと慣れない感覚に襲われ、思わず身をよじらせる。
その瞬間、そんな私を小馬鹿にするような“ふふっ”という独特な笑い方が聞こえた。

「___っ...、あなたっ、なんなんです…か…？」
『あなたじゃないよ、ほーくーと』
「なんで、私の名前っ、知ってるの…？」

私は耳を押さえながら、口角を上げる男に放つタジタジな言葉。
ふわふわと喋る話し方はなぜか余計に気味が悪かった。

『名前～？そんなの知ってるよ』

「えっ…？」

『母親がいないとか父親のレイp…「やめて！！」

隣にいる男を思いっきり押す。
でもビクともしない男の体。
男は尚も笑っていた。私の反応を楽しむかのように…。
私は男の言動のせいで徐々に這い上がってくる記憶に、頭を押さえた。
どうしてそんなことを知ってるのか。

なんで...なんで...？

馬鹿な頭では考えられない難しく絡まり合う事実に、思考回路が爆発寸前

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『Aちゃんはさ…、壱馬の正体知ってて一緒にいるの？』

それ以上リアクションをしない私に北人さんは言葉を続けた。
でもそれは、さっきとは打って変わった真面目なトーン
耳にすっと入ってきたその声に、私は頭から手を離し顔を上げた。

そこには口角は上がっておらず、こちらをじっと見つめる男の姿。

その姿が映ると共に、私はその瞳を見つめながら首を横に振った。
それを見た男は声を放つ。

『気づいてるでしょ…？壱馬がどういう仕事してるかとか』

薄々は気づいていた。それは本当だった。
だから、驚かなかった…。
男は話を続ける。

『思い切って言うけど、俺は、壱馬が殺す相手の情報収集と死体処理、いわばお掃除屋』

「＿＿＿＿＿＿＿…？」
『だからAちゃんのことも知ってる。殺す相手の娘だったから。』

北人さんの言葉が頭に響く。
彼に出会ったあの日が脳裏に浮かんだ。

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