Wolf (ページ16)

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赤い髪の彼ページ16

＊

『びっくりしたよ～。急に呼ばれたと思って来てみたら、すぐ目の前に仕事場！』

北人という男の人はそう言い放つと、先ほどまで私が座っていたソファーにドカンと腰下ろした。
私は彼の手を握ったまま、私よりも高いその背中の後ろに身を隠す。

彼の知り合いって言うのは雰囲気でわかっていても、どうも初対面の人に免疫がない。
怖いという感情が私の中にどこかしたらあった。

『ねぇ壱馬、やっぱりあの話本当だったんだ』

でもふと私が彼の背中から少し顔を出した時、
ソファーに座る男の人と目が合った。
するとその瞬間その人はニヤッと笑みを浮かべて、言葉を放った。

明らかにそれは私に向かってだっと思う。
思わずまた彼の背中に縮こまった。

『＿＿＿＿＿ちっ…。風呂入る…』
『ちゃんと血の匂い落としてね～』

何を理由にそんな不機嫌なのか、
そう思わせるほどの怒り声を発した彼
そして、北人という人の言葉を聞くとなぜか離された手。
質問に答えもせず、私の前から退いた。

私はその場を動かず、行き場を失った手がだらんと下がった。
そして男はそんな私を気にもせず、そのまま廊下に出てお風呂の方へと進んでいってしまった。

「かず…ま…」

北人という人が言ったその名前…。
初めて聞いたそれを彼の背中へ無意識に唱える。
でも彼は歩くのをやめず、私の声は消えていった。

お風呂場のドアを閉める音が見に入る。

・

・

と、その瞬間

『Aちゃん、こっちおいで？』

ソファーに座る男が隣に座れとばかりにその場を叩いて、こちらを見た。

優しそうな暖かい笑みを浮かべるその人。
私は少しずつ近づいていったが、座る勇気もなくソファーの脇に立ち尽くした。

そんな私を見た男は少しソファーから立ち上がって私の腕を掴み、無理やり座らせる。
ソファーが激しく揺れた。

・