Wolf (ページ15)

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唇を合わせ続ける中、部屋に鳴り響いたノックの音。

『来たか…』

男は唇を離してそういうと、持っていた水を置いた。
そして私に目で“待ってろ”と伝えると、玄関へ向かおうとする。

『おい…』

私は頭に響くノック音に男のパーカーの裾を掴んだ。
怖かった、さっきみたいなことが起こるのが…。

掴む手が震えていることに気づいた男は私の手を振り払わず、
私の体を支えながら立ち上がらせる。
そして力なく立った私の手を掴みながら、玄関への廊下を歩いた。

「っ…」

玄関のドアに手をかける男を視界に、私の手は震えを増す。
“大丈夫”とでも言いたいのかそれに比例して、手を握る力が強くなった。

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ガチャ_________________________

ドアが開き、私はその瞬間に目を瞑る。
電気の付いていない玄関に外からの光が入ってきていることが開かずとも分かった。

すると、突然私の肩にぽんっと手が乗る。
私は驚きのあまり体を揺らしたが、伝わってくる温もりに恐る恐る目を開けた。

『こんにちは』

目を開けると、すぐ目の前にいる見知らぬ男の人。
髪の毛は赤っぽい茶色をしていて、ほっそりとしている人だった。

『俺、北人っていうんだ。よろしくねAちゃん』

急に自己紹介をされる私。
ふわふわした喋り方が特徴的だったが、それよりも呼ばれた名前に目を丸くした。

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