Wolf (ページ2)

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狼は突然にページ2

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“うっ、うわぁぁぁぁ！”

大っ嫌いなあいつの声が部屋中に響く。
そしてそれと共に聞こえる気持ち悪い音。
私の目の前で赤い血が舞った。

「っ...」

あいつに脱がされた服を抱きかかえながら、下着姿のままベットの横で固まる。
少し視線をずらせば、白いスーツの上に横たわるあいつ。
ピクリとも動かず、ただ血だけが流れていた。

そしてそこからもう少し視線をずらすと、ベットの正面にいる男。
黒い服にフードを深く被っていて顔は見えず、右手には血のついたナイフを持っている。

震えて体を動かすことが出来ない私はただ男を見つめた。
死体を見ていた男だったがふとこちらに気づいて、一歩また一歩と近づいてくる。

『なぁ...』

血の香りが強く鼻をかすめると同時に、目の前にしゃがみこむ男。
フードで先程まで見えなかった顔が見えた。

『あんた、こいつの娘？』

低いその声が耳に入る。
男が顎であいつを指すと、私は首を縦に振った。

『こいつみたいに死にたい...？』

死にたい...。死にたくないといえば嘘になる。

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母親を早くして亡くした私は、物心ついた頃から父親と二人暮しだった。
愛する人を亡くしたあいつは私を母親と重ね、毎日のようにベットの上に投げつけた。

まだ体も小さく出来なかった抵抗という2文字。
ただ私は泣いていた。

そして歳を重ねる事に変わりますます過激化するあいつの態度に、
いつしか“死にたい”と思うようになった。

＊