Wolf IV (ページ9)

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表情ページ9

＊

短い音ともに、温もり自体は離れていく
でも残った余韻で心は熱を上げていた

彼の頬に添える手は驚くほど震え、
彼の表情を見るのが怖いのか、瞼も震えて、なかなか目が開けられなかった

これは別れのもの？
それとも違う意味のもの…？
彼の表情見ると、答えがわかってしまうようで、嫌だった

「っ…」

彼を見つめる勇気も、答えを知る勇気もなかった私は、瞼を開けず、再び彼の顔を引き寄せ、唇をぶつけた

驚いて、彼の唇は先ほどよりも一瞬硬くなったが、すぐにそれもとけた

頭の神経にビビッと駆け抜ける感覚と、身体の中から溢れ出そうな何か
その口づけに酔いしれたという言葉が正しいと思う。

・

「…壱馬」

長いキスを心に刻んだ私は、ゆっくりまぶたを上げ、彼の名前を呼び、そして怖々彼の表情を視界に入れた

『ふっ…』

彼は優しく控えめに笑った
目に留まったその彼の表情は、柔らかかった

私の心はその瞬間、なにかの重りが取れたかのように軽くなった

・

・

でも…、

「えっ…？」

その表情を最後に、彼は急に私に背を向けた
向けたまま、立ち上がり、足を前に動かしていく

「っ…」

驚きのあまり、“待って”の一言ですら口から出てこない

どうして…？なんで…？
そんな疑問を滝のように流しても意味が無い

やっぱりダメだったの…？
心で訴えかける言葉は、彼には届かない

・

そのまま彼は私たちの姿を隠していた角を曲がり、逆に私の視界が彼を捉えられなくなった…

＊