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『じゃあもう一度聞く。専属の殺し屋になるか?』
男は声を出さなかった。
しかしその代わり、ガチャンという音と共に、拳銃をしまう
『では、行こうか』
番人は男に背中を向けると、元来た方へ歩き出した
・
男はその背中を見ながら、胸元のネックレスに手をかける
彼の頭の中には、大切な1人の少女が浮かぶ
生きていると分かれば、彼女は必ず自分を探す
だからせめて、死んだと思わせたい
死んだと思わせて、二度と会わないように…
彼女に会ってしまえば、自分自身で守りたいという欲望に負けてしまいそうになるから…
彼女のそばにはきっと北人が居る
・
男は視線を倉庫内に回した
いつの間にか死体は片付けられていたが、先程撃った人影から出来た血溜まりが今も残っているのが見える
それと共に、自分の私物が残っているのを見れば、きっと北人が死だと判断するだろう
・
「っ…」
全てが全て、男にとって苦渋のものだった
男はネックレスを引きちぎると、その場に投げ捨てた
そして、まるで思い出を後に残すかのように、足早に番人の背中を追った
・
・
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男と番人が共に乗った車が発進して、どのくらい経った後だろう
“いやぁぁぁぁぁ_______”
男の耳には悲鳴のようなものが聞こえた気がした
一番聞きたくなかった人の悲鳴が…
もう倉庫からはとっくに離れているはずなのに…
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作者名:M谷 | 作成日時:2022年5月14日 23時