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私の耳には激しい銃声が繰り返し響き渡り、
それが頭に響いた余韻の音なのか、今繰り広げられている音なのか分からなくて、ただ必死に耳を塞いでいた
けれど、その声は銃声よりも華麗に指の間を通り抜け、まるで魔法のように私の中に広がった
その瞬間、長い時間耳を強く塞いでいたこと、
そしてもう銃声は止み、耳に響いていたのは単なる余韻であったことに気付かされる
「っ…………」
『A』
耳に添えた震える手を彼はそっと包み込む
ゆっくり外されたその手と同時に顔を上げると、愛おしい姿が見える
その姿は血まみれだった。
大量についているものは、彼の血だろうか、それとも他のか。
整った顔には擦り傷がいくつもあって、血が滲んでいる
・
「何がっ……あったの……?」
私がその言葉を口にした瞬間、彼は視線を落とした
一音目の衝撃が体をかけまわり、声の出し方が急に分からなくなる
「っかず…ま…?」
そして彼は問いかけにも名前にすらも反応せず、
「っ…」
そのまま私を逃げてきた時と同じように横抱きにした
全ての彼の行動の意図分からず、私は激しく困惑していて、
持ち上げられた時に走った傷の痛みも直ぐになくなってしまった
彼はどうして私を置いて角を曲がって行ってしまったの?
さっきの銃声はなんだったの?
その後どうして戻ってきたの?
問いにも答えにくれなくて……
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作者名:M谷 | 作成日時:2022年5月14日 23時