ほんとの姿_s.O ページ22
■
聞こえた。
A先生の話。
「俺、なんにもしらなかった……」
だって、先輩はいつも強くて…姉みたいでって
徳丸くんはしゃがみ込んでる。
「本当に弟だと思ってたからこそ、弱いところを見せないようにしてたんじゃないですか。弟だと思ってたからこそ、知って欲しくなかったんですよ」
姉や兄はそういうものじゃないのか、話を聞いてて
余計にそう思った。
A先生のお兄さんが妹に会う資格なんてないと言っていたのもこういうことだ。
なんらかの理由があったかもしれないけれど
妹からすれば、唯一の家族である兄が突然でて行った
おいていかれたと思ったかもしれない。
会う資格がないとお兄さんが思うのも無理はない。
涙のリミッターがぶっ壊れて
喜多見チーフにしがみつきながら泣いているA先生が、外から伺える。
今の社会、ネットが普及していて
犯罪を犯せば、社会に再復帰するのさえも難しい
まして、あんな脅迫紛いのことも
きっと直接的なものばかりだけではなく
ネットでの誹謗中傷も増えているんだろう。
それをいつもの事で処理するA先生は
今までどれくらい、堪えていたのか。
可哀想と思うなって言われる方が難しい。
けど、彼女は多分同情されるのが嫌いだから、
誰にも何も言わなかった。
助けも、本音も。
周りにも同情の声を言わせなかった。彼女自身が。
そうやって強く生きようとしたから。
けれど、どうしても弱気になってしまうことがあった
平成初期の大事件
今でも、その日には追悼式が行われるほど
事件発生から、犯人が逮捕されたのはその2年後
何人も殺しておきながら、2年ものうのうと自分は楽しく生きてきたのか、被害者遺族の気持ちも知らずに、そういうところも重なったのか
余計に彼女達家族は追い詰められたんだ。
世論は
2年も殺人鬼と一緒に暮らしていて可哀想だ。とか言うやつらもいる。
でも、そう思われる事自体が、不快なんだろう。
「あ、いた。呼び出すなら夜中か朝イチにしてくんねぇ?」
「そうそう、言い訳考えるのでめちゃくちゃ忙しいの」
「融通気かねぇ仕事」
ヒールを鳴らして、その人は現れた。
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作者名:Lerian | 作成日時:2021年9月23日 20時