壊れるのは一瞬 ページ20
■
俺がA先生にそういうと、カバンの中から
ファイルを取りだした。
「これは…」
『もう何十年もこういう手紙が届きます。昔は家に落書きされたりが多かったんですけど。』
内容はどれもひどいもので、
手書きのものから、打ち込みのものまで様々
人殺し、とか、罪を認めて謝罪しろとか
どこへ逃げてもお前は逃げられないとか
お前らのやったことは消えないだとか
お前みたいな人間が医者をする資格なんてないとか。
まとめて言ってしまえば、誹謗中傷。
『20年前に起こった無差別殺人事件の犯人が私の父でした』
小さい町で、家族4人、もうすぐ産まれる弟。
お金はあんまりなかったけど、幸せだった。
事件の数年後、父親が逮捕されるまでは。
『あの小さな町では、後ろ指を刺されて、逃げるように町をでた。でもどこへ行っても追いかけてくるメディア、マスコミに母はストレスを抱え流産してしまった。病気にかかっていたのに殺人鬼の妻だからという理由で白い目で見られるのが嫌だからとまともな治療も受けずに死にました』
当時、12歳と19歳だった自分と兄は名前を変えて
逃げた。
『兄は大学を中退して仕事をし始めました、私を養うために』
でも、私はそのころどうせ私は一生追い回されて
クソみたいな人生送るんだろうなって毎日思ってた
思ってて、努力もしなかったと…
『兄は……出て行きました、私が高校卒業したくらいに。高校時代の私は大荒れでしたから、多分たいそうな足枷だったんだと思います』
10年くらい、会ってないですけどって話していたのを
思い出した。
出て行ったからって会いにいくつもりもない。
そう言い切った。
『結婚したって噂で聞きました…やっとどこかで平穏で幸せな生活を手に入れてるかもしれないのに、それを壊してまで会いに行こうなんて思いませんよ』
A先生の声が震えている
287人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Lerian | 作成日時:2021年9月23日 20時