家族はいない_s.O ページ8
■
エレベーターに乗っていた救命医
彼女は、徳丸くんの先輩。
この前MERに挨拶しに来ていた人。
彼女が意識を失ってから、
念のため時間が空いた時に一日一回は様子を見にきている。
いつものように、病室へと足を運ぶと見ない顔。
「あの……蓮見A先生の御家族の方ですか。」
「まぁ、はい。あなたは……」
「エレベーターに一緒に乗っていた者です。」
「そうでしたか…妹は大丈夫ですか?」
「はい、過労と一酸化炭素中毒の初期症状で意識を失っていますが、命に別状はないそうです」
「あのこれ、妹が起きたら渡してください。俺が来ていたことも内密に……お願いします」
「ご自分で渡されては?」
「妹に……会う資格なんてないんです。」
その男は、紙袋を押し付けるようにして
病室を出ていった。
「これを天沼先生から渡してくれと預かりました」
名刺だ。
『え、誰ですかそれ』
そして、天沼先生の名刺をビリビリに破き、
その場で廃棄した。
いつも、徳丸くんの話に出てくる蓮見A
本当に話のままの人だなと思う
『あー……いません。ひとりも。気にしないでください、私が出てった身なので。』
「そうですか。これ良ければ、」
『え、私の大好きな羊羹じゃないですか』
「いつも昼がゼリーか羊羹なので、好きなのかなと」
『ありがとうございます〜、これ美味しいんですよね、安いですけど』
「食べすぎないでください」
会う資格がない、1人も家族なんて居ない。
出ていった身。
こうも重そうな話を本人から聞き出すのは気が引ける
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作者名:Lerian | 作成日時:2021年9月23日 20時