雛119匹:対峙 ページ25
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___はやく行かなきゃ…
いくつもの車両が続く中を、床を蹴りながら走り抜ける。
何が起こったのが理解できていない乗客が、座席で背を丸めて震えている光景ももう何人もみた。
「…動ける人は列車からでてください!!できるだけ多く人を連れて!!」
呼びかけに応じるのはごくわずか。子供の言うことになんか耳をかしてはくれない。
目が合ってもふいとそらされる。呼びかけよりも帯刀している刀に怯える人までいた。
はよ動けやこんにゃろうと思うがここは我慢。
きっと怖いんだろうな。なにが起こったかわからないんだから。
そして今日何度目かの呼びかけをしようと次車両のドアに手をかけたとき、ついにそれは姿を現した。
(……なにかいる)
直感で感じた違和感。人の気配、それ以外のもの。
刀と一緒に、藤の花をきゅっと握り締める。
(……大丈夫)
大丈夫だから。
(……私ならいける)
勢いにまかせ扉を引く。音とともにあらわになった車内の景色…___それはとても予想外のものだった。
「___…おや……?もう目が覚めたのか…」
「………な…」
電灯に照らされる車内の中、眠る人々に張り付いている先程の触手。
そして、座席に挟まれた通行路の真ん中にいたもの……それは、口のついた手であった。
(…鬼が分裂した、もの…?)
柄を握りしめて対峙する。
時間はない。けれどどちらから切るべきか。乗客の安全も第一だけれど、こいつが触手を操っているのだとしたら先にこいつを切るべき。
「…君は、たしか花の里出身の子か」
「__…は?」
「君だけは起きることはないと思っていたんだけどなぁ」
花の里出身って、なんで知ってるの。そう聞こうとしたとき、ああそうかと理解した。
(…こいつの本体の、血鬼術が夢をみせるものなんだ)
汗がぽたりと床に滑り落ちた。
「君、自分でも思ってたんじゃないの?このまま夢の中にいた方が幸せだって」
「…だまって」
「まぁそれはそれでいいんだけどね。君の大切な里の人間を殺して、絶望する君の顔、あと少しで見れると思ったのになぁ」
ぴきり、と額が音をたてた。
左足に力を入れ、床を蹴飛ばす。鬼のいる場所ごとえぐりとるように刃先を向けた。
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砂糖しぁっ。(プロフ) - うささる@さん» なんと!夢主ちゃんも応援してくださるのですね…!?コメントありがとうございます!空いた時間で更新していくのでよろしくおねがいします!! (2020年2月23日 9時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖しぁっ。(プロフ) - おもちさん» わぁぁこちらこそぉぉ。なんかチャットになりつつあるかなぁと私の自己判断でしたことで…すみません。ゆっくり更新するので気長にお待ちくださいー。 (2020年2月23日 9時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
うささる@(プロフ) - 先が気になります!主ちゃんも砂糖さんも応援しているので、自分のペースでがんばってください!! (2020年2月23日 8時) (レス) id: 12e32336a9 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - お話を読み返すのも楽しいので無理しないで下さいね?応援してます(*^^*) 間違えてたらすみません、前のコメントで不適切なことを書いてしまったかなと思いまして、、もしそうなら申し訳ないです。 (2020年2月23日 7時) (レス) id: 203d84a786 (このIDを非表示/違反報告)
砂糖しぁっ。(プロフ) - おもちさん» なにせ裏表の激しい子ですから…。とくに人が見ていなければ言っちゃうもんですこの子は…。なにせ頑固な子ですから……))そんな夢ちゃんですがこれからも暖かく見守ってやってください (2020年1月28日 0時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖しぁっ。 | 作成日時:2020年1月13日 17時