雛46匹:当たり前 ページ47
「なぁ伊之助」
「あ?なんだ!?俺に話しかけるな!」
「悪い。Aは大丈夫だろうか」
「話しかけんなっつったろ!」
そうだな。心配だ。と言うと、伊の助はますます息を吹いてぷんぷん怒り始めた。
やっぱり一人で行かせたのはまずかったかもしれない。
鼓の屋敷でのあの怪我。肋を折った俺達がいえることではないが、あの怪我の仕方はおかしい。
脱臼したまま普通に生活するなんて常人には到底不可能だし、足の捻挫にも気付いてないようだった。
痛覚がおかしいのか?
だったらなおさら一人にしてはいけなかったんじゃないのか?
(…いや、落ち着け。Aならきっと大丈夫だ。いざとなったら善逸もいる。きっと無事だ。今は目の前のことに集中しろ)
いやな思考を振り払い、俺は、操り糸が落ちて突如動きを止めてしまった隊員達を見つめた。
♡
「……あ、ぶな…」
大木がスッと糸もたやすく切れた光景を見て、あと少し反応するのが遅れてたら…。と不謹慎な妄想をする。
この子鬼、操る糸の強度が尋常じゃない。
一度でもあたったら即ばらばらだ。
刀を構え直す。すると、奥にいた母鬼がおずおずといったように子鬼の元へ駆け寄ってきた。
「…る、累?あのね、ちがうの…。さっきのは」
「ちょっとだまってて」
「…や、ちがうの…ねぇきいて、話を…」
「…うるさいなぁ」
その一言で、子鬼は目の色をかえて手をかざした。
こっちにくる!そう思ったのもつかの間、彼は私に投げるであろう糸を、なんの戸惑いもなく母鬼へと投げたのだ。
ギンッと糸の張る音で、母鬼の頸に巻き付いた糸がくいこんでいく。
その恐ろしい光景を前に、私は足がすくんだ。
悲鳴を上げて母鬼が倒れ込む。
「なに、してるの」
「…なにってなんのこと」
「なんで家族に…そんなことしてるの」
そんなこと?これは自業自得だよ。と言いながら糸を引っ張る。今にも頸が落ちそうだった。
「僕たちは家族なんだ。恐怖でつながれた絆の家族…。言いつけを守らない母さんが悪いんだ」
ごく当たり前というように彼は言った。
私はただ呆然とした。
恐怖でつながれた絆?なにが絆だ。なにが家族だ。
「そんなの…当たり前よ」
「…は?」
「そんなひどいことされるの…私だったら耐えられない。死にたいと思うのは、間違ってない。」
強い口調でそう言うと、子鬼は眉をぴくりと動かした。
「…お前を殺す。殺して…、…あなたを自由にしてあげる」
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ゆきだるま(プロフ) - 砂糖しぁっ。さん» いえいえ〜全然構いませんよ〜!これからも頑張って下さい!応援してます〜+.(*'v`*)+ (2019年12月27日 13時) (レス) id: bda2441edd (このIDを非表示/違反報告)
砂糖しぁっ。(プロフ) - ゆきだるまさん» どうも初めましてこんにちは!!指摘有り難うございます!!コメント全然気付きませんでした!!ごめんなさいそしてありがとう!!! (2019年12月27日 12時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきだるま(プロフ) - どうも、初めまして!この小説を読み始めたのは最近なんですけど、すっごいハマりました…!頑張ってください!!それから、炭治郎の''郎"の字が"朗"になってますよ〜応援してます! (2019年12月14日 8時) (レス) id: bda2441edd (このIDを非表示/違反報告)
砂糖しぁっ。(プロフ) - くどはるさん» コメントありがとうございます!!いい意味でも悪い意味でも、裏切ります!(無駄にいきいきしてる)。続編制作中ですので、楽しみに待っていてください!!ヒロインちゃんまだまだがんばりますよ!!!! (2019年8月29日 19時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる(プロフ) - いい意味で裏切られたような感じです!ヒロインちゃんに簡単には靡かない男性陣たちを見れて新鮮だしとっても面白かったです。続きが早くみたくて待ちきれないです!! (2019年8月29日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖しぁっ。 | 作成日時:2019年7月6日 18時