雛45匹:鬼の母子 ページ46
女の人はしばらくこちらを凝視したあと、私の刀を見て、ひっ。と上ずった悲鳴をあげた。
その女の人をよく見てみれば、かかげた指の先に光できらりと反射する細い糸が。
鬼だ。
あの山へと続く道で、男の人を引っ張ったのはたぶんこの鬼。
刀に手をかける。指が熱く震えているのがわかった。
「訊きたいことがある。この山に鬼は何人いるの?あなた一人?」
「…ち、ちがっ……や………」
「何人殺したの?その糸?その糸で相打ちにさせたの?」
「いや……ちが……」
質問しても彼女は言葉らしい事を発することは無い。
だが、数刻すると、ひどく混乱したように首を振っていた鬼は、ある時を境に、私を見つめたまま固まった。
糸のついた指が震えている。
(………怖がってる?鬼が?……いや、なにか考えてる…?)
油断しないようまた構えを深くする。
すると、鬼はかかげていた手を膝に下ろした。
驚いて固まっていると、鬼は口を開いた。
「___死ねば……楽に、なれる…?」
「……え…?」
「死ね、ば…」
鬼は、まるで“殺して”とでもいうようにこちらを見つめた。
この人の過去になにがあったのかは知らないが、この鬼はなぜか死を切望している。油断させようとしてる?と疑ったが、鬼の子指からぷつりと糸が落ちたのを見て、ちがうと察した。
「……ころして…」
「……」
「おねがい」
鬼が、とうとう首を差し出して懇願しはじめた。
ぽろぽろと涙を流している鬼に、困惑しながらも一歩近づく。首に狙いを定めて、刃筋を向けた……その時。
「……ねぇ…。なにしてるの母さん」
女の鬼は目を大きく見開いて声のない悲鳴をあげた。
あ、あ…。と顔色を悪くしながら「るい」と背後の木に向けて声を発した。
女から距離をとる。
「なにしてるの。…って、訊いてるんだけど」
「るい…!ち…ちがうの…!!これは、その…」
なにがちがうの。と言いながら出てきたのは、背の小さい白い着物を着た鬼。
たんたんと会話をするが、私は先程の言葉に耳を疑った。
るいと呼ばれたその鬼は、先程、この女を母さんと呼んだのだ。
(鬼は群れないはずなのに…。どうして…)
刀を構え直して彼等と対峙した……その瞬間、それは唐突に、私の目の前に現れた。
「え」
「君、邪魔。死んでいいよ」
無数の細く透明な糸が、私の体を引き裂いた
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ゆきだるま(プロフ) - 砂糖しぁっ。さん» いえいえ〜全然構いませんよ〜!これからも頑張って下さい!応援してます〜+.(*'v`*)+ (2019年12月27日 13時) (レス) id: bda2441edd (このIDを非表示/違反報告)
砂糖しぁっ。(プロフ) - ゆきだるまさん» どうも初めましてこんにちは!!指摘有り難うございます!!コメント全然気付きませんでした!!ごめんなさいそしてありがとう!!! (2019年12月27日 12時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきだるま(プロフ) - どうも、初めまして!この小説を読み始めたのは最近なんですけど、すっごいハマりました…!頑張ってください!!それから、炭治郎の''郎"の字が"朗"になってますよ〜応援してます! (2019年12月14日 8時) (レス) id: bda2441edd (このIDを非表示/違反報告)
砂糖しぁっ。(プロフ) - くどはるさん» コメントありがとうございます!!いい意味でも悪い意味でも、裏切ります!(無駄にいきいきしてる)。続編制作中ですので、楽しみに待っていてください!!ヒロインちゃんまだまだがんばりますよ!!!! (2019年8月29日 19時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる(プロフ) - いい意味で裏切られたような感じです!ヒロインちゃんに簡単には靡かない男性陣たちを見れて新鮮だしとっても面白かったです。続きが早くみたくて待ちきれないです!! (2019年8月29日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖しぁっ。 | 作成日時:2019年7月6日 18時