雛39匹:春巻き ページ40
「一体なにをいまさら…」
黒い隊服を身にまとう。
師範が発注してくれた長い隊服が、私の足を隠してくれている。
このおかげで、私は醜い傷跡を露見させずに済む。
そっと、部屋の鏡の前に立った。
あんなにザックリ切られた顔の傷が、一夜にして元通り。
よかった。痕残んなくて。
櫛で髪を梳かして、頬に手を当てる。
「よし…。今日も絶好調!」
羽織を持って、障子を開けた。
朝の光が、眩しかった。
♡
皆の元に行けば、昨日のお医者さんが出向いてくれていて、私も診てもらった。
両足の捻挫も完治、脱臼は昨日みんなに手伝ってもらってはめ直した。顔の傷も綺麗さっぱり。
うん、快調な回復ぶりだ。
藤のおばあさんに挨拶もして、今は目的地に向かっている最中。
……なのだが…
「おい!そこのチビ!お前俺の子分になれ!!」
「もおぉ、チビじゃないって!花櫛!花櫛A!」
「そうか春巻きか!!」
「まってまっておかしいって。春巻きはおかしいよ」
「Aちゃんはなぁ!!お前みたいな筋肉野郎になびかねぇんだよ!!」
「静かにしないか!!見られてるぞ!!」
公の前で大声で喧嘩する単細胞二人がうるさくてかなわない。
私に来る視線も来なくなるだろうがふざけんなよ。
すると、二人に説得するのを諦めたのか、炭治郎は私の元へ来て、先に行こう。と呟いた。
肩を並べて歩き出す。
「大変だねぇ。炭治郎さんも」
「まぁ…。でも、こういうのには慣れてるから」
「へぇ。それって、下に何人も兄妹がいたから?」
「それもあるかもなぁ」
そこまで言うと、私達の間に静寂が下りた。
町の出店を眺めていると、草餅の屋台があることに気付いた。
ヨモギ色のその饅頭。
本当は、選抜が終わったら師範と食べるつもりだったのに。
あの草餅、道に落としたまま来ちゃったな。今頃蟻の餌になってるかな。と考えていると、炭治郎は、唐突に口を開いてこんなことを言い出した。
「そうだ…。ずっと思ってたんだけど、Aはその髪結ばないのか?」
「…本当に唐突だね…。なんで?」
「いや…刀を振る時とか邪魔じゃないのかなぁって、思って」
「うむ、それを話すと長くなるが…よろしいのか?」
「よろしいです」
意外とノリの良い炭治郎だ。
腕組みをしている私に向かって、ていうか、誰の真似してるんだ?と笑う炭治郎につられ、私も頬が緩んでしまった。
528人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきだるま(プロフ) - 砂糖しぁっ。さん» いえいえ〜全然構いませんよ〜!これからも頑張って下さい!応援してます〜+.(*'v`*)+ (2019年12月27日 13時) (レス) id: bda2441edd (このIDを非表示/違反報告)
砂糖しぁっ。(プロフ) - ゆきだるまさん» どうも初めましてこんにちは!!指摘有り難うございます!!コメント全然気付きませんでした!!ごめんなさいそしてありがとう!!! (2019年12月27日 12時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきだるま(プロフ) - どうも、初めまして!この小説を読み始めたのは最近なんですけど、すっごいハマりました…!頑張ってください!!それから、炭治郎の''郎"の字が"朗"になってますよ〜応援してます! (2019年12月14日 8時) (レス) id: bda2441edd (このIDを非表示/違反報告)
砂糖しぁっ。(プロフ) - くどはるさん» コメントありがとうございます!!いい意味でも悪い意味でも、裏切ります!(無駄にいきいきしてる)。続編制作中ですので、楽しみに待っていてください!!ヒロインちゃんまだまだがんばりますよ!!!! (2019年8月29日 19時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる(プロフ) - いい意味で裏切られたような感じです!ヒロインちゃんに簡単には靡かない男性陣たちを見れて新鮮だしとっても面白かったです。続きが早くみたくて待ちきれないです!! (2019年8月29日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:砂糖しぁっ。 | 作成日時:2019年7月6日 18時