【鬼滅の刃】可愛いあの子は確信犯

雛27匹：斬られた ページ28

　
　

必死に“だめだよ。”と言うパツキンを、訝しげに首をかしげた。
　
　

｢脱臼くらいでそんな大げさな…｣


｢脱臼くらい！？何言ってんのかな？！痛い痛い痛いその左腕目に入れるだけで痛いぃ！！！｣

　

てかはよ逃げんとおお。と言いさらに加速するパツキン。

脱臼をそんな致命傷みたいに扱って…。何言ってんだ。こいつは馬鹿？阿呆？なんでも過剰に言い張る奴？

　

｢ほんとっ、大丈夫だから！｣


｢あぅああっ！ちょっ…！｣


　
ぐいっと引いて、パツキンの握っていた右手を離した。
その拍子に彼は地面に顔面から衝突。
ごめんねちょっと吹きそう。


｢ごっ…ごめんなさい…大丈夫？｣


｢可愛いから…いいけど……｣



手をついて立ち上がろうとする彼。
だがその途中、急に顔を上げて前を見た。
来た！と視線の先をたどると、先程私に足を斬られた鬼が、血走った目をして追いかけてきた。

　

｢善逸さん！急いで！立って！｣


｢まままま待って待って…｣


　
踵を返して走り出す。その間は、またずっと善逸さんが手を握ってきた。


　
｢待て……！絶対許さねええ。その女、とっつかまえて食ってやる！！｣

｢いややめよう！？俺達そんな美味しくないよ！！？｣

｢食べてみないと分からないだろ！｣

　

鬼は移動したまま、ビュッと舌を伸ばした。
咄嗟にパツキンを返り見る。
震えている彼を、守らなければ…


攻撃手段を減らしてやるために、再度構えようとした。が、それはまたパツキンによって遮られる。

　

｢Aちゃんだめだってえぇぇ！｣


｢ひゃっ！？｣

　

パツキンが、咄嗟に私を抱えて飛び退いた。そのまま白い障子を突き破って倒れ込む。
痛みが無い。彼は、自分の体を下敷きにしていた。
　


｢ぜ、善逸さん！起きて！｣

｢はああやばいきてる！恐怖が八割膝にいいい！！｣

｢でも…！｣

　

震えるパツキンの音と鬼が近づく音が鮮明に聞こえた。
そこから動けないまま鬼はやって来て、座り込んでいる私達を見て鼻で笑った。
　


｢今度こそ、二人まとめて死んじまえ！！｣

　

勢いを増して向かう舌。
咄嗟に壱の型に移るも、それはなぜか私の顔寸前でピタリと止まった。
え。と驚いて固まった一瞬のスキをついて、鬼は動く。

　

刹那、私の右顎から額にかけて、鮮烈な痛みがほとばしった。


　


｢＿＿っ！Aちゃん！！！！｣
　
　
　

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