雛25匹:脈打ち ページ26
「Aちゃん!!」
「…え」
よがっだあああ。と叫んで抱きつくこの男。
パツキンじゃなくて炭治郎なら…。と若干絶望したが、居ないよりはマシだと思い、回りを見渡した。てる子ちゃんも正一くんもいない。炭治郎のとこに一緒にいたらいいんだけど…。
「Aちゃあぁぁん!もうだめだあ。俺と二人きりとかもうだめええ守ってくれる人がいなあああいいぃぃ!!!」
「だ、大丈夫!私が守るよ!」
「いや俺が守るよ!」
「あ、そ、そう…」
矛盾してやがるこいつ。とうとう馬鹿だな。と悪態をついて、とにかく進もう。となだめた。彼は袖で顔を拭って立ち上がる。
それからパツキンは、何かを考えるように俯いた。
「…善逸さん?」
「…俺が」
「…?」
「俺が守るから」
今にも泣き出しそうな顔をして、彼は私の前を歩き出した。
そのカタカタと震えている体が、今は少しだけたくましく見えた。
(…大口叩く割に、それに見合うくらいのことはしてくれるんだ…)
ただの弱虫ではないのか?
いや、きっと女好きのただの弱虫ね。
今だけだよきっと。
……でも…
「…Aちゃん」
「!…な、なに?」
「袖掴んでてよ」
はぐれたら危ないでしょ?なんて言って、震えながら笑いかける。
ああ、この人も、どんだけ真っ直ぐなんだろう。
きゅっ。と黄色い羽織をつかむ。
またゆっくりと歩き出したパツキンに付いていく。
「…」
「……ヒッ、ヒエッ…」
…炭治郎といい、このパツキンといい…
なんでみんなこんなに素直で真っ直ぐなのか…。
パツキンは、なんでこんな常人が恥ずかしいと思う台詞を、照れもせずに言えるのか…。
私の笑顔には鼻の下を伸ばして真っ赤になるくせに…。
(だめだだめだ。調子狂いまくりだ。一対一はやっぱりいやだ)
震えて歩く彼の後ろ姿を、髪の間からのぞき見た。
褒めてやろうかなと思い「善逸さん」と口を開く。
__そのとき
「ウィヒッ……子供だ……舌触りが良さそうだ……」
「……は」
善逸さんが先程とは打って変わり、冷や汗ダラダラで後ろを振り向く。
四つん這いで、だらしなく舌を出している鬼が、私たちの方を向いていた。
その瞬間、私の心蔵が、ドクンと深く脈打った。
そして、ここら一帯に男の断末魔が響き渡った。
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ゆきだるま(プロフ) - 砂糖しぁっ。さん» いえいえ〜全然構いませんよ〜!これからも頑張って下さい!応援してます〜+.(*'v`*)+ (2019年12月27日 13時) (レス) id: bda2441edd (このIDを非表示/違反報告)
砂糖しぁっ。(プロフ) - ゆきだるまさん» どうも初めましてこんにちは!!指摘有り難うございます!!コメント全然気付きませんでした!!ごめんなさいそしてありがとう!!! (2019年12月27日 12時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきだるま(プロフ) - どうも、初めまして!この小説を読み始めたのは最近なんですけど、すっごいハマりました…!頑張ってください!!それから、炭治郎の''郎"の字が"朗"になってますよ〜応援してます! (2019年12月14日 8時) (レス) id: bda2441edd (このIDを非表示/違反報告)
砂糖しぁっ。(プロフ) - くどはるさん» コメントありがとうございます!!いい意味でも悪い意味でも、裏切ります!(無駄にいきいきしてる)。続編制作中ですので、楽しみに待っていてください!!ヒロインちゃんまだまだがんばりますよ!!!! (2019年8月29日 19時) (レス) id: 51da6414e6 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる(プロフ) - いい意味で裏切られたような感じです!ヒロインちゃんに簡単には靡かない男性陣たちを見れて新鮮だしとっても面白かったです。続きが早くみたくて待ちきれないです!! (2019年8月29日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂糖しぁっ。 | 作成日時:2019年7月6日 18時