朧月〜oborozuki〜

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「今までお世話になりました。」





これと言った荷物もなく、自分で持てるだけに収まった荷物を持って、




お父様に挨拶をする。





花嫁道具として持たされたのは、新しい着物ひとつだけ。





「あらお姉様もう行くの〜





せいぜい殺されないように気をつけてね〜」






ニコニコと楽しそうに近づいてくる香耶は耳元で





「もう帰ってこないでね、おねー様の居場所なんてもう無いんだから」





じゃあいってらしゃーいと背中を力強く押す。





もちろん両手に荷物を持っている私は、派手に転ける。





「わ、大丈夫かい?Aちゃん。」





幸治さん。香耶との縁談の件できたのだろう。







「あ、はいだいじょ「幸治さーん！こっちに来て婚姻の日の着物選んでくださらなーい?」






幸治さんは私から素早く目を逸らして、香耶の元へと走っていってしまった。

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