いちご水２ (ページ16)

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６２water＿T side ページ16

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佑亮とどこか似ている光を宿したあの女の目に

自分自身が映し出されることに、

僅かながらためらいを感じている。

あの目に姿を映し出される度、

俺は懲りずに胸を痛めるだろう。

最後に見た佑亮の後ろ姿が、瞼の裏側に浮かび上がり

責められているような錯覚に陥ってしまうからだ。

そんなことになってしまえば

夏休みという期間を利用して心を休めるどころか、

今まさに突き刺さっている針の深みを

さらに悪化させるだけにすぎない。

会ってはいけない。

声を掛けてはいけない。

これ以上、関係を深めてはいけない。

そういったマイナス要素を含んだ予感ばかりが

俺の胸に苦しいほどにこだましていた。

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もうすぐ太陽が夕日に変わろうとしている。

しかし女は未だその場所を動こうとしない。

たった一人、たった一つの影が現れるのを

ただひたすら待っている。

どこの誰だかわからないけど、早く現れてやってくれよ。

そうしてその影と共にさっさとこの場所から立ち去ってくれ。

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そうでもしなきゃ俺は

ちっぽけな期待を捨てきれないんだ。

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通りすがりの人間達は、電信柱に身を隠す俺の姿を横目に

たちの悪い変質者にでも出会ったかのように

露骨に距離を広げていく。

あ、あの男、さっきもこの道通ったな。

あの水色と黄色のストライプ柄のシャツ、

あまりにセンスが悪いからしっかりと覚えている。

と、車が体すれすれを横切った。

一瞬、窓ガラスに映った自分の姿に

俺は唖然とせずにはいられなかった。

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……何やってんだ俺。

滑稽さがあらわになる。

この場所にいること自体がひどく間違っているような、

そんな焦りが込み上げる。

………もう、帰ろう

このままここにいたって、どうしようもない。

ようやく心を固めたちょうどその時だった。

女が口にした言葉によって、

俺は帰り道へと向けたつま先を

再び女のいる向きへ戻すことになる。

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