いちご水２ (ページ15)

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６１water＿T side ページ15

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今だから言うけど、

期待なんてこれっぽっちも抱いていなかった。

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わかっていたから。

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会えるはずないことくらい。

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二人の出会いは爽やかなものでもなければ、

ましてや普通でもなかった。

様々な角度からどう粘ったって

いい意味で捉えることは難しく、

特段、求めたがるようなものではなかったはずだ。

それに相手の女からしてみれば、

見られたくなかった場面を見られてしまったわけだから、

俺とこれ以上の関わりを持つことを望むなんて

まず有り得ないだろう。

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しかし

確信に限りなく近かったはずの予想は

見事に裏切られたのだった。

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たどり着いたポストの前

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女の姿はたしかにそこにあった。

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何度も確認した

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何度も

何度も

何度も

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人違いかもしれないと思った。

ただ似ているだけかもしれないとも思った。

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しかし、何度見直しても女はそこにいる。

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間違いなく昨日、あの場所で会ったあの女が。

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いつ、何時からここにいたのかはわからない。

けれど確かなのは、

俺より先にこの場所に来ていたということ。

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考えがうまくまとまらず、

何と声を掛けたらいいのかわからなくて、

俺はとっさに近くの電信柱の陰に身を隠すと

少し離れた場所から女の様子を窺った。

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女は誰かが来るのを待っているようだ。

その証拠に、足音が響くたび、

期待に満ちた表情で音の方向を振り返っている。

それが待ち望んでいる相手じゃないとわかると、

今度はわかりやすく肩を落としている。

その相手が誰なのか、自分かもしれないと

期待を抱かずにはいられなかった。

『あれ？こんなとこで何してんの？』

そうやって偶然を装い、それとなく姿を現せばいい。

そう思っていながらも、この場所から進めずにいるのは、

女の目が、足を踏みとどめるおもりになっているから

なのかもしれない。

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