いちご水２ (ページ13)

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５９water ページ13

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くだらないこと

どうでもいいこと

場所を移動するわけでもなく、

ホストの前

二人はひたすら言葉を探して並べてゆく。

短い間に多くの言葉を交わしたせいか、

昨日出会ったばかりだというのに

不思議と心が通いあっているような錯覚に陥る。

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「あ、雨」

と、予感もなく私の頬に当たった

冷たい一粒の滴によって

会話が中断された。

『降ってきた？』

「うん。ほら、これ」

そう言って、滴を指先で取り

息を吹きかけ形を歪ませる。

手首を流れ落ちていく滴を目にした男は

『へえ、当たるもんだな』

と、思いのほか無邪気に表情を崩した。

「当たる？何が？」

『天気予報』

「そう言えばそうだね」

『そろそろ帰り時だな』

「……うん」

帰り道へと向けられる互いのつま先は、

それぞれ別々の方向へと分かれている。

『気をつけて』

淡白にそう言い放ち、男は私の返答を待つことなく

家に向けて足を進めた。

複雑な感情が入り交じる中、

私は遠くなってゆく男の後ろ姿を

静かに目で追った。

追って

追って

そして、想う

もう、二度と会えないかもしれない。

もう、二度と道は繋がらないかもしれない。

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どうしてだろう

このまま手放してはいけないような

見失ってはいけないような

そんな気がしてる。

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「…………待って」

意志とは関係なく唇から発せられた言葉。

その声に気づいたのか、男はピタリと足を止め、

時間をかけてこちらを振り返った。

伝えたい言葉はある。

届けたい感情はある。

それなのに言葉がうまく出てこない。

男はしばらくの間、不思議そうにこちらの様子を

窺っていたようだが

やがてしびれを切らしたのか

不意に上げた片手を左右にひらひら振ると

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『また』

最後にたった一言だけ、そう言った。

また

また、会える。

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いつ、どこで、何時に

そんなことはどうだってよかった。

一つ一つが決められなくたってよかった。

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最後に残した笑顔を見て、

また

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明日も

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この場所で

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あなたに会えると信じることができたんだ。