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     来歴 ページ6

【来歴】
ちょっと人より兄弟が多いごく普通の人生、だと本人は思っているようだが機能不全家族そのものである。
父親が一回目に離婚したのが12の時で姉1人弟3人妹1人。再婚し16の時にまた離婚するまでに、さらに弟1人妹2人がふえる。何を思って子供全員の親権を取ったのかはわからない。ただ確かなのは、家にはクソガキどもによって常に"混沌"が広がっており、上の兄弟であるめるがヤングケアラーの役目を押し付けられなければならないこと。

事実、両親は基本的に子供だけ家に放置して不在、在宅していても「泣いてる子供を黙らせようと叩いて更に泣かせる」くらいの家事しかしなかったので、めると姉は小学校にあがらないうちから椅子を踏み台にしてキッチンに立ち、包丁をにぎってハムを切り、コンロに火をかけてそうめんを茹でていた。

常に下の兄弟に泣き叫ばれのしかかられ「自分の部屋」なんて概念すらない家で育っためるが、自分が下の兄弟を養うんだという責任感を持ってまっとうに勉強しまっとうに高校に通っているのは奇跡に近いのかもしれない(というかめる自身、経済的な理由から高校を受験できると思っていなかった)。唯一の姉にはこの生活が耐えきれず(それが正しいのである)、しぶしぶ働いて家にお金を入れていたが急にカレシと結婚して消息不明。がんばれめる、葛原家の明日のために。

責任感はあるものの、中学生の間は家に帰ると兄弟の世話があるのが嫌で、自分がいてやらなきゃと思いつつも部活で時間を潰していた(ずぶずぶにのめりこむほど演劇に熱中したのは、自分じゃない誰かになって一時的にだけでも現実から逃れられるから)。高校に入ると家計の問題が切迫してきたので、下の兄弟に家事を教えて自分はバイトをするようになる。

無意識ではあるものの、彼はHO2のことを「家」からの逃げ場として、また与えられなかった母性、父性といったものの投影先として扱っていたのだろう。だからHO2を失っためるは、小石が追い詰められた崖っぷちからぽとっと落ちて行くように、自宅のマンションの連絡通路から地面に身を投げた。自分がいなければ下の兄弟たちは生きていけないから、死ぬつもりなんてなかったのに。

実際、彼は運良く助かってしまった。が、怪我の療養と引退時期の兼ね合いで演劇をやめることになり、以来、めるは必要以上に、自分の持てる空白の限りを労働につぎ込みはじめた。無駄なことを考える時間をなくし、埋めようのない穴から目をそらすために。

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作者名:ここりどらす | 作成日時:2023年10月30日 4時

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