かさねあい【九井一】

初恋.5 ページ5

貴「デート？」
九井「そう、デート」

貴「…行きたい」
九井「好きなとこ選んでいいから」

貴「はじめくんと選びたい」
そういうAに胸がギュッとなる

全部、赤音さんと重ねてしまうけど
九井「…じゃあ一緒に選ぼう」

赤音さんと行きたいところ
行きたかったところ

そんなの、全部に決まってる
貴「……正直、はじめくんとならどこでもいいかな」

そう言って少し恥ずかしそうに笑う
九井「…っ、」

あぁ、本当に…
数日一緒にいただけで

俺の心をかき乱して
時間が経って消えてしまいそうだった想いが蘇る

九井「…俺も、Aとならどこでもいい」
貴「決まらないね」

また、楽しそうに笑った
貴「じゃあ、一緒にお買い物したい」

九井「…あぁ、そうしよう」
貴「ふふ…楽しみだね、はじめくん」

九井「……うん、楽しみ」
その笑顔が赤音さんと重なる

何度も何度も、重なる
これでいいのかって何度も思う

赤音さんにもAにも
失礼なんじゃないか、って…

貴「…どうしたの？はじめくん」
そう言いながら俺の顔を覗き込む

赤音さんそっくりの顔に
息が詰まった

九井「……ううん、大丈夫」
…いいんだ

Aも別人を重ねてるから
お互い様だ

俺は重ねられて嫌だとか、思わない
同じ苦しみを知ってるから

だから、きっと、
Aなら許してくれるだろう

互いの隙間を埋めるためだ
もう、手段は選んでられない

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